構造設計者不在の建築業界

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最近、この事件のためか仕事が普段の倍くらいに増えてしまいました。おかげでブログは、ほったらかしですが、それでも一日数百人以上の方が訪れます。ホントにありがたい事です。
そして、数人の方にブログの更新が滞ってるとご指摘をいただきました。
これはまずいとアセって記事を更新する管理人です。
そろそろ計算書偽造の事件も落ち着くだろうと思っていると、新たな登場人物がひょこり現れてきて、また話題をヒッパルというか、なんというか・・・。
ぐちゃぐちゃの泥試合で見ている方は、だいぶストレスを感じていると思いますが、我々構造技術者はそんな事は気にせずに、やるべき事をやるのみです。
悪者探しは他の方々におまかせするとして。
今回の事件のおかげで
・建築物と人命の密接な繋がり
・建築物としての資産価値つまりお金
など考える時 ”耐震構造”とか”構造設計”という事が非常に重要になってくることに改めて一般の方には気づいていただいたと思います。
一般の方々にもっと構造について知ってもらうための情報を少しづつ書いてみます。
●構造設計者不在の建築業界
今回の事件で、みなさんが不思議に感じている事があります。それは、そもそも何で構造計算の偽造を見抜けなかったのか?という事です。
「それは業者側が意図的に見て見ぬ振りをしていたからだ!」
これは私には判りません。意図的なのかそうではないのか。ただ言える事は仮に意図的ではなかったにせよ、構造計算の中身はよくわからなかったのではないかと思います。
今回の売り主、建設会社、意匠設計事務所も、一応一級建築士事務所の登録をして、内部にはちゃんと建築士を雇って経営していると思います。
どの業者も建築士がちゃんといて、法的には全く問題なく営業しているのですが、いざ構造設計の事になると、どの会社もよくわからない。
小規模な設計事務所ならまだしも、年間数百億円も売り上げる会社がですよ?ちょっとそれっておかしいと思いませんか?
例のごとく、変なたとえ話をさせて頂きます。
総合病院があります。そこには当然のように整形外科もあるのですが、実は整形外科の先生がいません。
骨が折れて患者が来た時は整形外科医以外の内科医の先生が診察します。そして、患者が重傷で手術が必要になると、内科医の先生の手には負えないので、個人で整形外科を営んでいる、整形外科医の応援を頼みます。
そして整形外科医の先生は麻酔で眠っている患者の手術だけして「じゃ」と言って、すぐ帰ります。患者さんは眠らされていますので、整形外科の先生の顔も名前も声もしりません。
術後の診察は、また内科の先生が行います。患者さん不安で色々と医師に質問をしますが、内科の先生ですから的確なアドバイスはできず、適当に話をごまかされます。たまに診察を間違ったりするのはご愛敬です。
どうでしょう。こんな病院があったら嫌ですよね。でもこれが建築業界の現状です。”整形外科医”を”構造設計者”と読み替えて頂ければ良いと思います。
外注にたのむ事自体はなにも悪い事ではないです。いま流行りのアウトソーシングです。どんな業界でもやっています。でもその内容をチェックするシステムがない事に問題があります。
そして、こう言った現実は今回の事件に関係している業者だけで無く、建築業界の全体にあてはまってしまいます。構造設計の技術者を内部に持っている会社はホントに少ないのです。
つまり、構造設計という建物の根幹に関わる部分を外注に出しておきながら、一般消費者に対して直接責任のある業者には、その構造に関わる内容を自らチェックする能力がない。
技術者が内部にいないのですから、チェック出来ないのも、不正が見抜けないのも当たり前です。
確認審査も同じです。構造設計を知っている、経験のある技術者がいないのですから不正があっても、ミスがあっても見抜けません。
私が外注に仕事を発注するとしたら、構造計画や重要な設計方針など、構造設計の基本的なストーリーは私自信で決め、外注先の構造設計者に指示を出し、中間報告なども受け、最終的にあがってきた仕事の内容を自分で確認します。
経験がある技術者であれば、みな出来る事ですし、普通の構造のできる設計事務所はそのようにしていると思います。
しかし現実には、一般消費者と直接繋がりのある会社で、それが出来る業者は一握りです。我々構造屋さんはオーナーさんから仕事を直接頂く事はほとんどありませんし。
どうしてこんな事になってしまったのでしょうか?実は私も良くわかりませんが、私がこの業界に入った時からずっとこうでした。
だからこそ、我々のような形態の構造専門の設計事務所が商売として、成り立っているとも言えるかもしれません。
骨を折ったら整形外科医に見てもらいましょう。建物の構造の事は構造設計の専門家に相談しましょう。当たり前の事が出来ていない建築業界のお話でした。

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