構造設計事務所 さくら構造 > 耐震診断・耐震補強設計 > 【マンション】決議要件が「4分の3」に緩和!構造設計事務所が教える「耐震性不足」の判断基準と再生戦略
耐震診断・耐震補強設計 2025.12.11

【マンション】決議要件が「4分の3」に緩和!構造設計事務所が教える「耐震性不足」の判断基準と再生戦略


日本のマンションでは、建物と住民の双方で高齢化が進み、修繕費の増大に加えて「老朽化」と「所有者の高齢化・不明化」が大きな課題となっています。

特に深刻なのは、老朽化マンションの「再生」です。 価値回復を目指すうえで、「建て替え(解体+新築)」や「一棟リノベーション」といった具体的な手法を検討しても、現行法では決議に区分所有者および議決権の総数の5分の4という非常に多くの同意が必要で、多くが断念されてきました。

しかし、2026年4月施行の区分所有法改正により、再生のハードルは大きく下がる可能性があります。構造設計の専門家として、その要点と判断基準を解説します。

私たちは耐震診断・補強設計を専門とする構造設計事務所として、今回の法改正の核心は「耐震性不足」の客観的判断にあると見ています。

老朽化に悩むマンション管理組合・区分所有者必読の内容です。この法改正はあなたのマンションにとって「建て替えのチャンス」となるかもしれません。ぜひご覧ください。

「5分の4の壁」解消|再生を願うマンション住民が主体となる分母の是正

老朽化マンションの再生には、主に次の3つの選択肢があります。

  • 大規模修繕
  • 一棟リノベーション(更新)
  • 建て替え(解体+新築)

中でも「建て替え」は、住環境を一新できる理想的な方法ですが、現行法では区分所有者および議決権の総数の5分の4以上の賛成が必要でした。この高いハードルが、多くの建て替えプロジェクトを断念させてきた原因です。

しかし、構造設計事務所として多くのマンション管理組合の苦悩を見てきた私たちの見解では、「5分の4の壁」の本当の課題は、反対住民の多さだけではありませんでした。

構造設計事務所が指摘する旧法の「構造的欠陥」

旧法の決議が機能しなかった根本的な原因は、「分母の考え方」にあったと考えられます。

又貸しや転居、所有権移転の未報告などにより、建物の所有者であるにもかかわらず、総会に出席できない、あるいは出席しないことを選択する所有者が多く存在します。

例えば、実質的な参加者が総数の70%程度しかいない場合でも、法律は「総数の80%以上の賛成」を求めていました。 これは、「決議に参加する意思や状況にない不在層も含めた総数」を分母としながら、実質的な参加者の数を大きく上回る賛成票を要求する、現状に合わない法の設計ミスでした。

つまり、真剣に再生を願う住民が100%賛成したとしても、そもそも5分の4の賛成票が物理的に存在し得ない状況が、多くのマンションで発生していたのです。

今回の法改正が提供する最大の法的メリットは、この法の欠陥を是正することにあります。

▲特定の事由がある場合、決議の賛成要件が 5分の4(80%)から 4分の3(75%) に緩和される

この緩和規定の適用により、「所在等不明の所有者の除外」や「出席者多数決による決議の円滑化」といった分母の是正が同時に進められます。 これにより、マンションの再生を真剣に願う住民が主体となり、議論を進める状況が生まれるのです。

この緩和規定を適用するには、「耐震性不足」を客観的に証明することが必須です。 これは、単に「古い建物だから」という主観的な判断では認められません。 法律のメリットを享受できるかどうかの判断は、構造設計の専門家による耐震診断結果にかかっています。

決議要件が4分の3に緩和される「耐震性不足」の客観的根拠とは

では、法改正において「耐震性不足」とは具体的に何を指すのでしょうか?
マンションの構造的な強度を示す判断基準として、専門的に用いられるのが「Is値(構造耐震指標)」です。

Is値(構造耐震指標)とは?

Is値とは、地震に対する建物の「強さ」と「ねばり強さ」を総合的に評価し、倒壊の危険度を数値で示す指標です。

Is値は「構造計算に基づき、客観的にどの程度危険か」を証明する根拠となります。

法律のメリットを享受できるかの判断基準となる、一般的なIs値の評価基準は以下の通りです。

Is値の目安※ 建物の状態(構造設計の観点) 法改正との関連性
Is値 0.6以上 現行の耐震基準を満たしており、倒壊の危険性が低い。 4分の3緩和の適用は難しい。
Is値 0.3以上 0.6未満 倒壊の危険性があるため、耐震補強の検討が必要とされることが多い。 診断結果次第で、4分の3緩和の根拠となる可能性が出てくる。
Is値 0.3未満 大地震で倒壊または崩壊する危険性が高い(現行の特定行政庁の判定基準に相当)。 4分の3緩和の適用を検討できる、最も客観的な証拠となる。

※このIs値の基準(0.6/0.3)は、国土交通省の告示に基づく全国共通の評価基準です。ただし、実際の診断結果Is値の算出には、建物の所在地に応じた「地域係数(Z)」が乗じられます。

あなたのマンションが4分の3緩和の対象になるかどうかは、このIs値がどの水準にあるかで決まると言っても過言ではありません。

そして、このIs値の算出には、専門的な構造図面の解析と現地調査(耐震診断)が不可欠です。

建て替えor一棟リノベ?構造設計事務所が教えるメリット・デメリット比較

法改正では、建て替えに加え、耐震性不足の場合は「一棟リノベーション(更新)」4分の3で可能となる方針が示されています。

選択肢 構造的な観点で見たメリット 構造的な観点で見たデメリット
建て替え 最新の耐震基準を満たし、構造的な寿命を完全にリセットできる。 総費用が高額化し、工事期間も長期化しやすい。
一棟リノベーション 耐震補強を行い、構造的な安全性を向上させながら、費用と工期を抑えられる。 既存躯体(柱・梁)の制約を受け、間取り変更の自由度が限定される。

建て替えは費用が高額になり、修繕積立金も充当できないため、一時金徴収が障壁となります。

それに対し、耐震補強を核とした一棟リノベーションは、建て替え総額と比較して費用と工期を大幅に抑えられ、経済的な選択肢として非常に有効です。 補強設計とリノベーション設計を一体で行うことで、コストを抑えつつ、4分の3決議のメリットを享受できます。

まず何から始める?法改正メリットを活かすための最善ルート

「うちのマンションは耐震性不足に該当するのか?」
「4分の3緩和は適用できるのか?」
という疑問を抱えたままでは、マンション管理組合の議論は進みません。

法改正のメリットを活かし、マンション管理組合として具体的な一歩を踏み出すための最善ルートは「法改正の判断基準を満たす“耐震診断”の実施」、ただ一つです。

■法改正の判断基準を満たす「耐震診断」の実施

  1. 現状把握:耐震診断を実施し、Is値(客観的な倒壊危険度)を算出する。
  2. 法的判断:診断結果に基づき、4分の3緩和の適用が可能かどうかを構造設計事務所と検証する。
  3. 戦略策定:診断結果と費用の概算に基づき、建て替え・一棟リノベーションのどちらが経済的・構造的に最適かを判断する。

「耐震性不足」の客観的証拠がなければ、法改正の恩恵を受けることはできません。まずは、構造設計の専門家に相談することが、法的メリットを最大限に活用するための最短ルートです。

さらに言うと、法改正の施行(2026年4月)を待たず、 今すぐに動き出す必要があります。

なぜ、法改正の施行(2026年4月)を待たずに今すぐ動くべきなのか?

建て替えや一棟リノベーションの検討は、①耐震診断の実施から始まり、②管理組合内での議論、③外部コンサルタント選定、④住民説明会など、決議までに最低でも数年単位の期間を要します。

法改正が施行される2026年4月には、緩和された要件で再生を目指すマンションが全国で一斉に動き出す可能性があります。施行前に耐震診断結果という客観的な証拠を持っていなければ、議論のスタートラインに立つことすらできず、再生の好機を逃してしまうことになりかねません。

まとめ|マンションの耐震診断は構造設計のプロへご相談ください

さくら構造株式会社は、数多くの老朽化マンションの耐震診断・補強設計を手掛けてきた構造設計の専門家集団です。

区分所有法改正の施行を前に、マンション管理組合が抱える「建て替えが進まない」「耐震性が不安」といったお困りの内容に対し、構造的な視点から最も合理的で、具体的な解決の道筋をご提案します。

まずはあなたのマンションの「構造的な寿命」と「法的メリット」を把握するための第一歩を踏み出しませんか?緩和された4分の3決議のチャンスを逃さないためにも、今すぐお気軽にお問い合わせください。

【さくら構造に耐震診断・耐震補強を依頼するメリット】

  • 豊富な実績数と技術力&全国対応
  • 正確な耐震診断で費⽤を抑えることができる
  • 中⽴の⽴場で最適な補強⼯法をご提案
  • 補助金の調査や申請もお手伝い
  • 建物用途・規模には制限なし(戸建住宅を覗く)
  • 建物の耐震性が一目でわかる報告書を作成

>>耐震診断・補強工事の詳細はこちらをご覧ください。

さくら構造(株)は、
構造技術者在籍数日本国内TOP3を誇り、
超高層、免制震技術を保有する全国対応可能な
数少ない構造設計事務所である。
構造実績はすでに8000案件を超え、
近年「耐震性」と「経済性」を両立させた
構造躯体最適化SVシステム工法を続々と開発し、
ゼロコスト高耐震建築の普及に取り組んでいる。

【さくら構造株式会社】
事業内容:構造設計・耐震診断・免震・制振・
地震応答解析・
構造躯体最適化SVシステム・
構造コンサルティング

●札幌本社所在地 〒001-0033
北海道札幌市北区北33条西2丁目1-13
SAKURA VILLAGE
TEL:011-214-1651  FAX:011-214-1652
●東京事務所所在地 〒110-0015
東京都台東区東上野2丁目1-13
東上野センタービル 9F
TEL:03-5875-1616  FAX:03-6803-0510
●大阪事務所所在地 〒541-0044
大阪府大阪市中央区伏見町2丁目1-1
三井住友銀行高麗橋ビル 9F
TEL:06-6125-5412  FAX:06-6125-5413
お見積り・お問い合わせ