旧耐震基準については、こちらの記事をご覧ください。
南海トラフ巨大地震や首都直下型地震など、日本各地で大規模地震の発生が予測されています。
今後想定される大規模地震に備える上でも、建物の構造安全性の把握は急務です。
皆様の大切な建物を守り、事業継続に必要な安全性を確保するため、大きな地震発生後にすぐに確認していただきたい、緊急の倒壊・損傷チェックポイントを提供します。
最大震度6強クラスの直下型地震は、旧耐震基準の建物は倒壊・大破の危険性が極めて高く、新耐震基準の建物でも、損傷が避けられないレベルです。建物の安全性を判断するためには、まず揺れの特性を理解する必要があります。
建物直下で起きる「短周期の激しい揺れ(直下型地震)」と、遠方から伝わる「長周期地震動」について解説します。
| 揺れのタイプ | 特性(周期※・震源) | 主な影響 | 危険な建物 |
|---|---|---|---|
| 直下型地震 | 短周期地震動(周期が2秒程度以下)、震源が浅い(キラーパルス) | 柱や梁への瞬間的なせん断破壊力 | 低層〜中層の建物、特に旧耐震基準の建物 |
| 長周期地震動 | 周期が2秒~8秒程度、遠方まで伝わる | 建物上層階の揺れの増幅と非構造体の破損 | 高層建物、タワーマンション、大スパンの構造物 |
※周期:波が1往復分だけ振動するのにかかる時間のこと
直下型地震とは、震源が陸地の直下、特に深さ20km未満の浅い場所で発生する地震を指します。 震源と観測地点の距離が近いため、初期微動(P波)から主要動(S波)までの間隔が短く、極めて短時間で最大級の激しい縦揺れ(キラーパルス)が発生するのが特徴です。 これにより、建物は瞬間的に大きな衝撃を受けます。
直下型地震の局所的な破壊リスクに加え、広範囲に影響を及ぼす「長周期地震動」は、特に高層建築物にとって重大な脅威となります。
地震によって建物に初期損傷が発生している場合、後発地震や大規模余震によって被害が拡大し、二次災害につながるリスクが高まります。
建物の管理者・ご担当者様は、この情報をリスクファクターとして冷静に受け止め、即時的なBCP(事業継続計画)の再確認と、建物の安全性が確認できるまでの業務継続体制の再検討を行う必要があります。
大きな揺れを経験した建物は、構造種別や工法を問わず、目に見えない部分で構造的な損傷を負っている可能性があります。以下のチェックリストに基づき、安全を確認してください。
【点検実施の注意】
建物の本格的な点検や、危険な箇所への立ち入りは、必ず大きな余震の危険が収まってから実施してください。生命の安全を最優先とし、二次災害のリスクがある場合は、外部から目視できる範囲の確認に留めてください。
| 構造種別 | 損傷のサイン | 危険性の目安 |
|---|---|---|
| 鉄筋コンクリート造(RC造・WRC造) | 柱や梁に発生した斜め方向のひび割れ(X型、せん断ひび割れ)。壁式構造(WRC)の場合は、耐震壁全体に同様の斜めひび割れやコンクリートの剥落がないかを確認。帯筋の破断や鉄筋の露出。基礎の大きな亀裂。 | 構造体のせん断破壊の兆候であり、倒壊に直結する危険性が高い。 |
| 鉄骨造(S造) | 柱やブレース(筋かい)の座屈(局部的な曲がり)。溶接部の破断や接合ボルトの緩み・せん断。柱脚部のコンクリートの破壊。 | 構造フレームの耐力と変形能力が大幅に低下している可能性が高い。 |
| 木造(W造) | 筋かいや耐力壁の破壊、柱と土台・梁の接合部(仕口・継手)の緩みや分離。 | 垂直荷重を支える力が失われつつあり、次の余震で倒壊リスクが増大。 |
地震による建物の被害は、地盤の動きと密接に連動します。構造体の安全を確認するとともに、建物の足元と周辺の地盤に異常がないか、以下の点を必ず確認してください。
建物の骨組み(構造体)に目立った損傷がなくても、天井や外壁などの非構造部材の損傷が二次被害や事業停止の原因となることがあります。これらの見落としやすい部位についても、以下のチェックをお願いします。
目視で確認できる損傷が軽微であっても、構造的な「余力」が低下している建物は少なくありません。
1981年5月以前に着工された建物は、震度5強程度での倒壊防止を想定した旧耐震基準で設計されています。想定以上の揺れに対しては、現行基準の建物に比べ、大破・倒壊に至るリスクが極めて高いと判断されます。
以下の要因は、建物の地震に対する抵抗力を静かに蝕み、地震の揺れによって一気に顕在化するリスクがあります。これらの項目に該当する場合、現在の耐震性能は設計時よりも大幅に低下している可能性が高いです。
一般的な建物とは異なる構造形式を採用している場合、その特殊な構造特性ゆえに、長周期地震動や巨大地震の揺れに対して固有のリスクが存在します。これらの構造を持つ建物の所有者・管理者は、特に慎重な点検が必要です。
構造設計の専門家として最もお伝えしたいことは、「目に見える被害がなくても、建物の寿命や耐力が低下している可能性がある」という事実です。次の巨大地震から大切な財産と命を守るための、具体的な行動について解説します。
建物の安全性を客観的に把握し、次の揺れに備えるためには、耐震診断が不可欠です。構造設計一級建築士など専門技術者は、設計図書と現場調査に基づき、現在の耐震性能を数値で評価(Is値など)し、目に見えない構造体内部の損傷を判断します。
診断の結果、耐震性能が不足している場合は、建物や事業の用途に応じて、人命保護を目的とする補強から、地震後も機能を維持する機能維持補強まで、最適な改修設計をご提案します。
多くの自治体では、旧耐震基準の建物を対象とした耐震診断や改修への補助金制度を設けています。これらの制度を積極的に活用し、補強設計から耐震補強工事までを実行することで、建物の安全性を高めることは、建物の所有者・管理者様にとって最も重要なBCP(事業継続計画)の一環となります。耐震化対策の実行により、建物構造の機能回復はもちろん、事業継続性を高め、将来予測される巨大地震へのリスクマネジメントの精度を高めます。
南海トラフ巨大地震や首都直下型地震など、今後高い確率で発生が予測される大規模地震は避けられません。
本記事でご紹介したチェック項目で一つでも不安な点が見つかった方、特に旧耐震基準の建物や深刻な経年劣化が見られる建物については、次の地震が来る前に、早めの耐震診断を実施してください。
構造設計事務所として、私たちは阪神・淡路大震災、東日本大震災、能登半島地震、そして青森県東方沖地震といった巨大地震から得た知見を未来の設計に活かすとともに、皆様の建物の安全確保に専門的な立場から尽力してまいります。
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さくら構造(株)は、
構造技術者在籍数日本国内TOP3を誇り、
超高層、免制震技術を保有する全国対応可能な
数少ない構造設計事務所である。
構造実績はすでに8000案件を超え、
近年「耐震性」と「経済性」を両立させた
構造躯体最適化SVシステム工法を続々と開発し、
ゼロコスト高耐震建築の普及に取り組んでいる。