建築を設計するためには幅広い専門領域の知識と技術が必要であるため、現在ではほとんどの建築において、建築設計者(意匠設計)とともに設備設計者や構造設計者が協力して設計を進め、それぞれの専門分野をカバーしています。
特に建築構造は建築の空間構成を規定します。例えば居室を広くするための壁・柱の位置や高さは構造によって決定されます。この求められる空間のあり方を十分に理解しそれを満たす構造を実現することが構造設計です。それでは具体的に「構造設計業務の流れ」についてみていきましょう。
建築主からどんな建物が求められているか(デザイン、建築予算、工期)。建築設計者(意匠設計)の意図する全体あるいは個々の建築空間の構成、形状、大きさ、そして高さはどのようなものか。環境条件として、どんな場所に建つか。その場所の地盤はしっかりしているか。そこではどのような地震、強風そして雪などが発生するのか。これらに対してどのような耐震性能や供用期間を設定するのか。
このように様々な条件を満たす構造の骨組や材料とはどのようなものか判断し、満足させるプロセスが構造設計業務の流れになります。
構造設計者との打ち合わせをスムーズに進めるためには、目標を明確に示すことです。その目標の中で重要なのが「コスト」と「性能」です。この「コスト」と「性能」は切っても切れない関係にあります。
建築構造でもっとも関心の高い「性能」は「耐震性」です。例えば、巨大地震により絶対に壊れない建物を造ることは、地震力の大きさがわかっていれば、工学的には可能です。しかし、大変なコスト(建設費)が掛かり、地震力に対抗するための耐震壁やブレースなどが多くなり、一般的に建物の使い勝手も悪くなります。つまり建物が存在する間に遭遇するかしないかという巨大地震に対して、これに備えて絶対に壊れない建物にすることは、不経済・非効率になります。よって、より安心できる「性能レベル」を選択できるように、対話を十分に重ね、要求する「性能」の目標を設定する必要があります。
また、コストに大きく影響する項目として、構造種別と基礎形式の選定があります。特に躯体コストの2割以上を占める基礎形式については、建物自体の自重の大きさ(構造種別)によって変わり、軽いほうが基礎の大きさを小さくできるためコスト的には有利になります。例えば一般的なS造の建物重量は、RC造と比べて30%程度の軽量化が図れるため、直接基礎や摩擦杭などの採用も可能となり基礎形式の選定幅が広がります。さらに建物用途、建物高さ(規模)、スパン、荷重条件、居住性能、施工性、敷地条件などもコスト、工期に影響するため総合的な観点で「性能」と「コスト」のトレードオフを考えなければなりません。
また、ここ数年の型枠工事や人件費、さらには資源の高騰による建築コストの上昇があります。そこで現場作業を省力化するため、プレキャストコンクリート(現場で組み立て・設置を行うことを前提に工場などであらかじめ製造されたコンクリート製品のこと)を採用することで現場作業の軽減や工期短縮による建築躯体コスト最適化を行う事例もあります。
このように、選定にあたってさまざまな要因が考えられますが、これらの要因を総合的に判断し、最適と思われる構造種別等を決めることが重要になります。
「工事監理」とは建築主の立場に立って工事を設計図書と照合し、工事が設計図書のとおりに実施されているかどうかを確認することです。この工事監理は、建築物の安全性等を確保するためには確実に実施されなければなりません。そこで、建築基準法では、工事監理者を定めなければならないとしており、また中間検査や完了検査の申請の際には申請書の中に工事監理の状況の報告を記載しなければならないこととなっています。
モノづくりの観点からは、設計した内容が現場でどうつくり込まれていくか、その生産体制を理解し、その内容を設計に反映させるとともに、監理によって確認することもまた肝要です。
しかしながら、構造計算書偽装問題や欠陥住宅問題などを通じて、監理が適切に機能していない実態が明らかになっているとの指摘があります。また、監理が適切に行われていれば防ぐことができたと思われる欠陥住宅などの被害も多くあります。
特に構造に関わる施工ミスは後から修繕するのは容易ではなく、建築物の安全性に深刻な影響を及ぼす可能性があります。こうした事態を防ぐためには、構造を含めた建築全般に関する幅広い知識をもった技術者(例えば構造一級建築士)が、細心の注意を払って監理業務を実施する必要があります。
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