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構造設計事務所が教える地盤改良・杭基礎コストを削減する工法比較のコツ


建築プロジェクトにおいて、地盤改良や杭基礎のコストは、全体の予算を大きく左右する重要な要素です。 コスト削減はすべてのゼネコンや建設会社にとって共通の課題ですが、その過程で安全性を犠牲にすることはできません。

この記事では、専門家である構造設計事務所の視点から、安全性と経済性を両立させるための地盤改良・杭基礎コスト削減と工法比較のポイントを解説し、信頼性の高い情報提供・設計検討サービスもご紹介します。

プロジェクト初期段階でコストを見積もる3つのポイント

建築プロジェクトのコストは、初期の計画段階でほぼ決まります。 特に地盤改良や杭基礎にかかる費用は、全体の予算に大きな影響を与えるにもかかわらず、その不確実性から多くの担当者が頭を悩ませる点です。

「思ったより地盤が弱くて追加費用が発生した」
「工法が複数あって、どれが本当に最適かわからない」

このような悩みを抱えているのではないでしょうか。

これらの課題を解決し、予期せぬコスト増を防ぐためには、プロジェクトのごく初期段階で以下の3つのポイントを押さえ、見積もりの精度を飛躍的に高めることが不可欠です。

地盤調査データの徹底活用

地盤改良のコストは、地盤調査データによって大きく変動します。 スクリューウェイト貫入試験(旧スウェーデン式サウンディング試験/SWS)だけでなく、ボーリング調査などの詳細なデータに基づいて地盤の状況を正確に把握することが重要です。

支持層の深さや土質を正確に特定することで、過剰な設計や不必要な工法を回避できます。 この段階での精密なデータ収集が、結果として大幅なコスト削減につながります。

複数の工法でシミュレーション

地盤調査の結果を踏まえ、複数の地盤改良・杭基礎工法で構造計算と概算コストをシミュレーションします。

柱状改良、鋼管杭、既成杭、場所打ち杭など、それぞれの工法ごとの材料費、施工費、工期、そして残土処分費までを詳細に比較検討することで、費用対効果の高い最適な工法を選定できます。

見落としがちなコストも考慮

地盤改良や杭基礎のコストを比較する際、資材費や施工費といった直接的な工事費用だけでなく、見えにくい間接的なコストにも目を向けることが重要です。 これを見落とすと、トータルコストで大きな差が出る可能性があります。

特に見落としがちなコストは以下の2点です。

・残土処分費
掘削によって発生した土の処分にかかる費用は、プロジェクトの規模が大きくなるほど高額になります。残土がほとんど発生しない工法(例:鋼管杭工法)を選定することで、この費用を大幅に削減できます。

・工期の短縮効果
工期が短縮されれば、仮設費や現場管理費、人件費といった間接費を抑えることができます。また、プロジェクト全体のスケジュールが前倒しになり、早期の引き渡しが可能になることで、別の経済的なメリットを生むこともあります。

これらの間接的なコストまで含めて総合的に評価することで、表面上の費用にとらわれず、真に経済的な工法を見極めることができるのです。

主要な地盤改良・杭基礎工法の費用相場と適用範囲

ここからは、実務で採用されることの多い代表的な工法を例に、その特徴とコストの目安をご紹介します。

ただし、ここに記載する費用は、あくまでも一般的な目安であり、地盤の状況や物件の規模、施工場所、工期など、様々な要因で大きく変動することを十分にご理解ください。 正確な費用については、必ず専門の地盤調査会社や工事業者に詳細な見積もりを依頼してください。

工法 特徴と適用地盤の目安 概算単価の目安
表層地盤改良工法 軟弱層が浅い場合に適している m²あたり:5,000円~10,000円程度
柱状改良工法 軟弱層が8m程度までの地盤で有効 mあたり:15,000円~30,000円程度
鋼管杭工法 軟弱層が30m程度まで対応可能 mあたり:30,000円~60,000円程度
既成杭工法 軟弱層が40m程度まで対応可能 mあたり:30,000円~60,000円程度
場所打ち杭工法 軟弱層が60m程度まで対応可能 mあたり:40,000円~80,000円程度

構造設計事務所も活用!信頼性の高い情報提供・設計検討サービス6選

ここまで、地盤改良・杭基礎のコスト削減に欠かせないポイントを解説しました。 しかし、これらのコスト最適化は、正確で信頼性の高い情報がなければ実現できません。

そこで、評判が良く、公正な情報提供と設計検討に役立つサービスをいくつかご紹介します。 実際に私たちが日々の業務で実際に活用しているサイトもあります。

これらのサービスを適切に活用することで、より精度の高い工法比較やコストシミュレーションが可能になります。

SKYパイルソリューション ストラボgrowth 地盤情報ナビ Kunijiban 地盤ネット ジャパンホームシールド
地盤調査・解析
杭基礎・工法選定
総合コンサルティング
費用シミュレーション
残土・環境配慮
主なターゲット ゼネコン/設計事務所 構造設計事務所 全般 全般 全般 全般

SKYパイルソリューション

SKYエンジニアリング
引用:SKYエンジニアリング

プロジェクトの初期段階からSKYパイルソリューションの専門家と連携することで、地盤改良と上部構造の最適なバランスを追求できます。さくら構造ではこのサービスを活用することで、従来のやり方では見出せなかったコスト削減の糸口を見つけることができています。単なる技術的なアドバイスだけでなく、プロジェクト全体を最適化するという視点での提案は、私たちの設計に新たな価値をもたらしてくれます。

■提供サービスの概要
地盤調査・構造計画のコンサルティング/上部構造を含めた総合的な構造計画提案/工法選定の情報整理サポートと技術的アドバイス

■サービスの特徴
複数の工法を熟知した構造設計者がコンサルティングを担当するため、質の高いアドバイスを提供。

■コスト削減のサポート
地盤調査の段階から関与することで、プロジェクト全体の最適化を図り、無駄なコストを削減。工法選定の情報整理や技術的な助言により、最適な費用対効果の工法を選び出すサポート。

■おすすめする活用シーン
・プロジェクトの初期段階で、最も費用対効果の高い工法を見極めたい時
・安全性を確保しつつ、全体コストを抑制する最適なプランを検討したい時

ストラボgrowth

ストラボgrowth
引用:ストラボgrowth

構造設計事務所に特化したコンサルティングサービスです。構造設計者が抱える課題を深く理解している点は、他にはない強みです。さくら構造では、ストラボgrowthに相談することで、複雑な案件のコスト管理や、社内業務の非効率性を改善するための具体的な方法を助言してもらっています。これは単発のプロジェクトだけでなく、長期的な会社の成長に繋がるものであり、業務効率化と費用削減の両面で、非常に有益なパートナーだと感じています。

■提供サービスの概要
構造設計事務所に特化したコンサルティング/プロジェクトの課題解決に向けたアドバイス

■サービスの特徴
構造設計者としての専門的な視点から、具体的で的確な助言が得られる。

■コスト削減のサポート
プロジェクトの課題を的確に洗い出し、具体的なコスト削減の糸口を助言。複雑な案件におけるコスト管理や、新たな工法の導入検討を支援し、業務効率化と費用削減の両方に貢献。

■おすすめする活用シーン
・複雑な案件のコスト管理や、社内の業務効率化を図りたい時
・新たな工法や技術を導入する際の具体的なアドバイスが欲しい時

【無料】地盤情報配信サービス『地盤情報ナビ』

地盤情報配信サービス『地盤情報ナビ』
引用:地盤情報配信サービス『地盤情報ナビ』

さくら構造でも日常的に利用している、日本全国の地盤の液状化・地震発生確率を地図上で可視化できる無料サービスです。対象エリアの地盤リスクを直感的に把握できるため、プロジェクトの初期段階で大まかな地盤状況を把握し、対策が必要かどうかを判断するのに役立ちます。

■提供サービスの概要
液状化危険度や揺れやすさ/活断層などの地盤リスク情報の地図表示

■サービスの特徴
全国の地盤リスクを地図上で簡単に確認できる。視覚的にわかりやすく、誰でも手軽に利用可能。

■コスト削減のサポート
プロジェクト予定地の地盤リスクを早期に把握することで、地盤調査や改良工法の必要性を大まかに検討できる。これにより、予期せぬコスト増のリスクを減らすことができる。

■おすすめする活用シーン
・新規プロジェクトの候補地選定時
・地盤の安全性に関する初期検討を行う時
・施主や関係者への地盤リスク説明の補助資料として活用したい時

【無料】国土地盤情報検索サイト Kunijiban

国土地盤情報検索サイト Kunijiban
引用:国土地盤情報検索サイト Kunijiban

国土交通省の機関が提供する、ボーリング調査や土質、地下水などの詳細な地盤情報を閲覧できるデータベースです。さくら構造でも日常的に利用しています。公共事業などで実施された調査データが広く公開されており、専門的な知見に基づいた詳細な地盤状況の把握に役立ちます。

■提供サービスの概要
ボーリング調査データや地盤に関する専門的な情報の閲覧

■サービスの特徴
公的な機関が保有する信頼性の高い地盤データを利用できる。詳細な地層情報や地下水位などを確認可能。

■コスト削減のサポート
詳細な地盤データを初期段階で活用することで、より精度の高い構造計算や工法選定が可能となり、過剰な設計や不必要な改良工事を避けることができる。

■おすすめする活用シーン
・ボーリング調査を検討する前に、対象地の地盤情報を詳細に確認したい時
・既存の地盤データを利用して、より経済的な工法を検討したい時

地盤ネット

地盤ネット株式会社
引用:地盤ネット株式会社

地盤解析専門のプロ集団であり、地盤に関する包括的なデータを有しているため、設計の初期段階で多角的な視点から検討できるのが最大の強みです。単なる情報提供にとどまらず、専門家からの技術サポートを受けられるため、複雑な地盤条件でも安心して設計を進めることができ、結果的に予期せぬコスト増を防ぐことに繋がります。

■提供サービスの概要
地盤調査から地盤保証まで、地盤に関する包括的なサービス/独自の地盤データ評価システム/地盤の専門家による技術サポート

■サービスの特徴
豊富な地盤調査データを保有しており、客観的なデータに基づいた評価を提供。大手ハウスメーカーや工務店でも採用実績が多数あり、高い信頼性を確立。

■コスト削減のサポート
独自の評価システムにより、最適な工法を客観的に判断でき、過剰な設計を回避。専門家からの助言で、現場特有の課題に対する費用対効果の高い解決策を見つけられる。

■おすすめする活用シーン
・複数の工法を比較する際の判断材料を明確にしたい時
・複雑な地盤条件のプロジェクトで、専門家の意見を聞きたい時

ジャパンホームシールド

ジャパンホームシールド株式会社
引用:ジャパンホームシールド株式会社

戸建て住宅や小規模建築の分野で、地盤調査から保証まで一貫して利用できるため、複数の業者を管理する手間が省けます。高いシェアと豊富な実績に裏打ちされた安心感は、特に施主への説明においても説得力のある材料となるでしょう。

■提供サービスの概要
地盤調査・解析、地盤補償サービス/地盤調査データを活用した各種ソリューション/建物検査・住宅設備の長期保証

■サービスの特徴
豊富な地盤調査実績とデータに基づいた客観的な評価。住宅業界での高いシェアと信頼性を確立しています。

■コスト削減のサポート
精密な地盤調査データと独自の解析システムにより、最適な工法を客観的に判断し、過剰な設計を回避します。また、地盤補償サービスと組み合わせることで、万が一の際の修繕コストを抑え、長期的なリスク管理に貢献します。

■おすすめする活用シーン
・戸建て住宅や小規模建築のプロジェクトで、信頼性の高い地盤調査と保証を検討したい時
・地盤の状況を正確に把握し、設計の初期段階で最適なソリューションを見極めたい時


上記のような公開サービスを活用するだけでなく、非公開のデータにアクセスする「裏技」も存在します。

もし何度か一緒に仕事をして関係性が構築できている杭業者がいる場合は、担当者に住所を伝え「近隣の地盤データがないか」と聞いてみるのも一つの手です。

彼らは多くの施工データを持っているため、公開されていない地盤の状況を知っている場合があります。 これにより、より詳細な情報に基づいた検討が可能になり、予期せぬコスト増のリスクをさらに減らすことができます。 今回ご紹介したSKYパイルソリューションも近隣地盤データの提供を行っている会社の一つです。

【ご注意ください】
ご紹介しているサービスの解説はあくまで主観です。 すべてのプロジェクトに同様の効果があることを保証するものではありません。 サービス提供の最新情報、ご自身のプロジェクトに最適なサービスであるか、必ずご自身でご判断ください。

まとめ|プロやデータベースの知見を戦略的に活用しコストを最適化する

地盤改良や杭基礎のコスト削減は、安全性とのトレードオフではなく、知恵と工夫で解決できる重要なテーマです。 今回の記事でご紹介した知識や、私たちが実際に活用しているサービスが、皆さまのプロジェクトの課題解決につながれば幸いです。

最終的に、安全性と経済性の両立を実現するためには、プロジェクトの各段階で適切な判断を下すことが不可欠です。 この記事が、皆さまのプロジェクトの一助となれば幸いです。

さくら構造(株)は、
構造技術者在籍数日本国内TOP3を誇り、
超高層、免制震技術を保有する全国対応可能な
数少ない構造設計事務所である。
構造実績はすでに8000案件を超え、
近年「耐震性」と「経済性」を両立させた
構造躯体最適化SVシステム工法を続々と開発し、
ゼロコスト高耐震建築の普及に取り組んでいる。

【さくら構造株式会社】
事業内容:構造設計・耐震診断・免震・制振・
地震応答解析・
構造躯体最適化SVシステム・
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