東日本大震災の時、首都圏の超高層ビルでゆっくりした大きな揺れが10分以上続き、多くの人が今までに無い不安を持ちました。
その原因である「長周期地震動」に関して、構造設計に携わる者として、思いつくままに書き留めてみました。
地震動には、いわゆる縦波・横波と呼ばれる「実体波」とLove波・レイリー波と呼ばれる「表面波」があります。
長周期地震動はこの表面波が卓越した地震動です。表面波の特徴としては、伝播経路が地表面であり、伝播速度は波長により変化します。したがって、地震動が伝播していく過程で、長周期成分と短周期成分の伝播速度の違いから、自然と周波数成分の分離が行われ建物に到達するときは一定の周期を持った調和振動が建物に伝わることになります。地震波形を見てみると、通常のランダム波のあとにある一定の波長の波形が見られます。
また、長周期成分は、距離減衰が小さく遠くまで減衰しないで伝わるという特徴があり、遠く離れた所で大きな被害が出ることがあります。とくに、巨大地震にはこの表面波が多く発生すると言われています。
また、長周期地震動は継続時間が長いことも特徴です。地震波の継続時間は断層の長さに比例することから、巨大地震になれば継続時間も長くなります。今回の東日本大震災でも、断層は約450kmと言われ、岩石が割れる時間が1秒間に約3km程度であることから、主要動の継続時間は2分30秒(450km÷3km/秒=150秒)程度と推察されます。さらに表面波の到達時刻が実体波より遅くなるために、最初に縦波が到達し次に横波が到達し、最後にこの長周期の表面波が到達するので、建物に対しては入力地震動の継続時間が長くなり、波状的な揺れに襲われます。
2003年の十勝沖地震で、遠く離れた北海道苫小牧市の石油タンクに「スロッシング」による被害が発生し、長周期地震動に対して注目され、それ以降多くの研究が行われています。しかし、実際の建築物の構造設計においては、長周期地震動を特別に考慮していないのが実体です。
国土交通省でもこの長周期地震動に対する取り扱いを決めるべく、平成22年12月にパブリックコメントとしてHPにて広く意見を募集し、既存の超高層建築物に対し安全性の確認と必要に応じて適切な補強対策の試案が提示されました。
実際に、このパブコメ波を使って超高層建築物の弾塑性応答解析を行った場合、その結果に対する安全性の指標として累積塑性変形倍率をもって評価することになりますが、それに対する法的な整備が必要と思われます。
また東日本大震災により「想定外」の事象が発生しており、早急に新しい知見を織込んだ対応が必要と思われます。
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