やっと姉歯氏の一連の事件は落ち着いてきたように感じますが、他の偽装に関する話しがチラホラニュースになっている所を見ると、過去の物件などで、まだ問題になる物件はあるかもしれません。
先日国会を通った改正建築基準法による、新しいチェックシステムがどれだけ機能するかは分かりませんが期待したい所です。
さて一連の耐震偽装は結局、姉歯氏の単独犯行説が有力になってきました。
それを聞いて私自身は全く違和感を感じることはありませんでしたが、同じ技術者としては、少し残念な気持ちになりました。
マスコミの方や、ネット上、また一般消費者の方たちも、姉歯氏が発注者からのプレッシャーを受けた事により、やむを得ず偽装を行った。
という考えが大半であったように思います。
つまり構造技術者が単独で構造計算書を偽装する事は、メリットとデメリットを考えれば、あり得ないという事ではないかと思います。
ところが、そこは「建築業界の常識は一般の人の非常識」です。
上記の考えは今の建築業界ではちょっと違う現実があります。
私のブログ構造設計者不在の建築業界のエントリーにあるように現状では、ハウスメーカー、建設会社、設計事務所、デベロッパー、さらには確認審査機関にすら経験のある構造技術者が少ない、いや、存在しないと言った方が現状に近いと思います。
私はこの状態を、「整形外科医のいない総合病院状態」と言っています。もちろんその総合病院には整形外科もあるのにです・・・
こういう現実の中では、構造設計業務は基本的にアウトソースされますが、内部的に構造技術者がいなければ、そのアウトソースされた構造設計の内容を発注者側は、どの様に評価するのでしょうか?
現状で行われていると思われる、構造技術者の一般的な評価は以下のような感じであると思います。
上記の様に工学的な内容では業界にはあまり評価されていないのが現実です。
というより内部に技術者がいないので評価しようがない・・・
逆に安全な建物を造ろうとコストをかけたり、設計に時間をかければ、業界からは嫌われます。
最悪の場合仕事の受注が困難になることもあります。
さらに景気低下に伴い、構造計算の請け負い金額も低下し、さらに法令上、資格の有無を問われない職種であったため、無資格で安く仕事を受ける構造技術者がさらに設計料の低下に拍車をかけました。
この様な業界の状況の中で、業界の要望を実現し、技術者としての評価、そして仕事と報酬を得るためにはどうしたら良いか技術者たちは考えます。
など、まじめに努力して、勉強して、営業して仕事を確保してきた訳ですが、もっと楽で確実な方法があります。
「手抜き+偽装」です。
モラルや技術力、営業力のない技術者は偽装により設計時間を短縮し、コストを落とす方法が一番手っ取り早く、業界の要望を実現できたのです。
仮に計算をごまかしても、発注者側には構造の専門家がいませんし、確認審査機関にもいませんから、気付かれない事を彼らは経験上知っています。
そして、こういった現実が、モラルのない一構造技術者の単独犯行という結果につながっていきます。
つまり、業界の現在のシステムが偽装や手抜きをやりやすくしている、もっと言えば手抜きや偽装をしたほうが業界に喜ばれるとさえいえるかもしれません。
まさに、今の建築システムの問題がバックグラウンドにあり、その結果として彼らの様な単独で偽装を行う構造技術者を生み出してしまったのではないでしょうか?
今業界は、この耐震偽装の件だけでなく、いろいろな面で変わりつつある様に私は感じています。
変化の過程で談合の問題や、耐震偽装の問題が表に出る様になり結果として、業界がいい方向に向かうのではないかと大変期待しています。
ただ最終的には、一般消費者の意識や価値観が変わらないと、業界も変わりきれないだろうとも思います。
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さくら構造(株)は、
構造技術者在籍数日本国内TOP3を誇り、
超高層、免制震技術を保有する全国対応可能な
数少ない構造設計事務所である。
構造実績はすでに5000案件を超え、
近年「耐震性」と「経済性」を両立させた
構造躯体最適化SVシステム工法を続々と開発し、
ゼロコスト高耐震建築の普及に取り組んでいる。