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定額制構造設計KozoWeb 2005.12.07

構造計算すらしていない建物


崩れるビルのイメージ画像
崩れるビルのイメージ画像

 

 

  1. 01構造計算すらしていない建物
  2. 02“一般の住宅は構造計算を行わない訳”
    予想1
  3. 04“一般の住宅は構造計算を行わない訳”
    予想2
  4. 04地震で死亡する可能性は
    住宅のほうが高い?

構造計算すらしていない建物

色々賑わしている構造計算偽造問題ですが・・・
偽造以前の問題として、構造計算すらしていない建物がありますよね?
たとえば、あなたの家。
木造2階建てなら構造計算は、ほぼしてないと思います。
壁量計算はしていますが、それは構造計算とは言いません。
構造計算が必要な建物とは・・・

・木造の建築物で3以上の階数を有し、又は延べ面積が500㎡、高さが13メートル若しくは軒の高さが9メートルを超えるもの
・木造以外の建築物で2以上の階数を有し、又は延べ面積が200㎡を超えるもの

という事でつまり、一般の戸建て木造住宅は3階建てか、あるいは500㎡を超えなければ構造計算の必要がありません。
たぶんほとんどの戸建住宅は構造計算が不要な範囲に納まります。
さて、では何故一般の住宅は構造計算を行わないのでしょうか?
業務に追われる中、がんばって少し調べてみました。
結果、わかりませんでした・・・・・無駄骨なので私の予想を書いてみます。
間違ってるかもしれませんので、そのつもりで読んでください。(誰か知っていたら教えてくださいっ)

“一般の住宅は構造計算を行わない訳”
予想1

Q小規模住宅をたくさん早く作らなければいけなかったから?

住宅と経済は密接な関係があります。
日本はご存じのようにすごいスピードで経済成長を成し遂げました。
そんな時代に、業界はスクラップ&ビルドを合い言葉に?決して性能が良いとは言えない建物をたくさん作ってきた過去があります。
各国の住宅耐用年数

  • アメリカは103年
  • フランスは86年
  • ドイツは79年
  • イギリスは141年

 

日本は30年程度でしょうか。
そんな時代が続いてきた訳ですから、小規模住宅で、そもそも構造計算なんてやっても、当時の時代の流れからいって不自然だったのではないかと思います。
「一々構造計算なんかやってられるか!」って事でしょうか。
また消費者もそこまで住宅に性能を求めていなければ、それで良し。
としていたのかもしれません。
でも、もうそんな時代はとっくの昔に終わっています。
一般消費者の方も性能へこだわりが以前より増していると思いますし、業界も良い物を作って長く使おうと努力しています。
また今ある古い建物を改修する等して、有効利用する色々な手法も考えられています。
最近流行ってる某リフォーム番組もその流れでしょう。

“一般の住宅は構造計算を行わない訳”
予想2

Q小規模住宅は数がたくさんあるので、詳細な計算をしなくても経験で安全を
確認できる?

昔の住宅は大工さんが長年の経験と勘で住宅を建てていました。
その経験は実は我々が机の上で計算して求めた答えよりも真実であるケースが少なくありません。
例えば、あるベテランの大工さんに、
「俺は、この町で、この仕事を50年やっている、地震も経験した、台風も来た、大雪も降った。
でも俺の建てた建物は一棟も壊れていない。いや俺だけでない、俺に仕事を教えてくれた師匠の代からずっとだ。だからこのやり方で問題ない!」
こんな事を言われたら、私などグーの音もでませんし、しかもそれは真実です。
そして、その経験と勘は、まさに私たちが構造設計の現場で「工学的判断」と言っている言葉の中に生きています。
ただ・・・
そこまで経験のある大工さんが今現在どれだけいるでしょう。
今の建築業界は効率化重視で機械化され職人の需要は減る一方。
しかも経験のある技術者に高い報酬を支払う習慣が浸透しているとは言えませんから、腕のいい大工さんは減少しています。
しかも、これだけ新しく色々な工法の建物が増え、複雑怪奇な形状の住宅が増えるなか、特殊なケースを全て職人の経験値だけで安全を担保できるかと言えば、非常に難しいと思います。
私たちも普段やっているタイプの建物の場合は計算などしなくても、ある程度柱や梁の断面がわかります。
というかわからないと仕事になりません。
しかし、特殊なケースになると、
構造計算をあらゆる角度から試設計し、自分の計算が間違っていないか?
耐力的に問題はないか?
など繰り返し計算を行い安全を確認するしかないのです。
私が予想する建築基準法上、構造計算をやらなくても良い理由は以上ですが、ここで実際の地震による被害を少し説明してみます。

地震で死亡する可能性は住宅のほうが高い?

阪神大震災について▼

http://www.kozobiz.com/archives/02designer/000087.html


阪神大震災の時、死者は6000人を超えその80%以上が建物の下敷きになった事での死亡でした。
そして一般住宅とビルや公共施設を比較してみると一般住宅の倒壊で死亡した方が圧倒的に多いという現実があります。
それは、地震発生時刻が5時46分という早朝だった事もありますが、そもそも住宅の耐震性がビルやマンションに比較して著しく不足していた事が最大の原因ではないかと思います。
住宅というのは、私たちが一番長く滞在する建物です。
したがって時間的な確率からいうと、住宅の倒壊で死亡する可能性のほうが、事務所ビルや学校、公共施設よりも高いはずです。
しかし、構造計算のどんな基準にも
「公共施設・官庁施設は公共性が高いので設計地震力を大きく割増しなさい」
となっています。
でも、それってホントに正しい事ですか?
耐震診断も、今現在公共性の高い建物を中心に行っている傾向がありますが、実際に地震が来て国民が死亡する時は他でもない、あなたが今生活している住宅の下なのです。
ここまで読んで見てどうでしょう。
今の建築基準法で一般住宅は構造計算不要というのは 「良い建物を作って耐用年数を長くしよう」 という今の時代に合わず、しかも過去の震災の被害状況を見ても住宅の耐震性能を軽視する理由などは一つもありません。
何かがおかしい事に気づきます。
いえ、これから家を建てる人、今現在非耐震の住宅に住んでいる人が気づいて自らがアクションを起こすべきです。
今回の事件は一般の方々に建築構造・耐震構造をめぐる現状を知ってもらう、いい機会になってほしいと思います。
構造計算をしなければ構造計算の偽造はされません。
では、“構造計算を偽造された建物” と “構造計算すらしていない建物”
あたなはどちらが良いですか?

追記
構造計算さえすればいいと言う意味ではありません。
今現在、世界でもまれな地震国で生活するあなたに、今一度考えてほしくて書いてみました。
自分と家族の命、そして財産は自分で守る。これが基本だと思います。

追記2
手前ミソですが、こんなサービスもやってます▼よろしくです。

耐震構造計算サービスKozoWeb

業者向けサービスですが、一般の方でも全く問題ないです。

田中 真一
SHINICHI TANAKA

代表取締役

執筆者の詳細

さくら構造(株)は、
構造技術者在籍数日本国内TOP3を誇り、
超高層、免制震技術を保有する全国対応可能な
数少ない構造設計事務所である。
構造実績はすでに5000案件を超え、
近年「耐震性」と「経済性」を両立させた
構造躯体最適化SVシステム工法を続々と開発し、
ゼロコスト高耐震建築の普及に取り組んでいる。