建物を計画する際、設計者が最初に決めることの1つに、建物の構造種別が挙げられます。現在、広く用いられている構造種別にはRC造(鉄筋コンクリート造)、WRC造(壁式鉄筋コンクリート造)、S造(鉄骨造)、SRC造(鉄骨鉄筋コンクリート造)などがあります。
建物を設計するとき、RC造(鉄筋コンクリート造)がよいのか、WRC造(壁式鉄筋コンクリート造)がよいのか、それともS造(鉄骨造)がよいのか、構造種別はどのように決めていけばよいのか悩みどころです。
また、意匠設計者や設備設計者にとっても、平面計画を作成していくためには、柱の位置や大きさを確認する必要がありますし、設備計画を進めていくには給排水や空調配管の経路を決めるための、梁せいや床構造の確認が必要になってきます。このように構造種別の選定は、建物の基本計画の段階で重要事項の1つとなります。
ここでは建築構造の種類(建築構造種別)についての基本的な考え方をご説明します。
まず、中低層建物で一般的に採用されている構造種別であるRC造(鉄筋コンクリート造)、WRC造(壁式鉄筋コンクリート造)、S造(鉄骨造)、SRC造(鉄骨鉄筋コンクリート造)の特徴について以下にまとめました。
RCとは、Reinforced Concreteの略で鉄筋コンクリート構造のことです。RC造の特徴としては耐火性、耐久性が高く、また遮音性や居住性に優れているため中低層の集合住宅等で採用されるケースが多くみられます。また鉄筋、型枠、コンクリートなどの材料自体が他の材料に比べ安価なため躯体コストを安くできるメリットがあります。デメリットは重量が重いため、比例して地震力が大きくなること、鉄筋の組立て、コンクリート打設などの現場作業が多くなるため工期が長くなる等が挙げられます。
WRCとは、Wall Reinforced Concreteの略で壁式鉄筋コンクリート構造のことです。RC造と同じく鉄筋コンクリート造ですが、柱はなく、開口上の壁と同厚の梁と壁で構成されており、居室内のデットスペースが生じにくいことから戸建住宅や低層の集合住宅などによく用いられます。また6面体として地震や台風の外力を受け止めるため、強度的に優れており、過去の大震災において、倒壊はもちろん大きな被害を受けた例はありません。
デメリットは、耐震性などを確保するために壁量(一定以上の壁の長さや厚み)が必要となり、壁に設置するドアや窓の場所が限定されるため、間取りの自由度が限定されてしまうことです。
S造とは、Steelの略で、鉄骨造のことです。S造の最大の特徴は、自重が軽く、材料強度が高い鋼材を用いることで、大スパンに対応できる点です。またS造の一般的な建物重量は、RC造が10〜15kN/㎡なのに対して、6〜10kN/㎡と30〜40%程度の軽量化が図れます。そのため地震力が小さくなり、中高層の事務所ビルや大スパンを有する工場などに適します。また部材は工場で製作し、現場では組立作業だけになるため、工期短縮が実現できます。
デメリットとしては、遮音性が劣る、耐火性能が低い(耐火被覆が必要)、座屈の問題、揺れやすいことなどが挙げられます。
SRCとは、Steel Reinforced Concreteの略で鉄骨鉄筋コンクリート構造のことです。S造(軽くて強い)とRC造(圧縮に強い)のそれぞれの長所を兼ね備えており、RC造に比べて耐震性に優れ、柱や梁の断面も小さくできるため、大スパンの計画(RC造の標準スパンが8m程に対し、SRC造は15m程)や高層建築物に用いられます。
デメリットとしては、現場での作業工種が増え、施工計画が煩雑になるためコストは割高になります。
■建築構造の種類一覧
構造躯体最適化工法について
さくら構造は、構造形式や構造材料の特性を活かした自社工法を開発しています。
詳しくは「構造躯体最適化工法」をご覧ください。
構造種別の選定にあたって考慮しなければならない主な要因としては、建物用途、建物高さ(規模)、スパン、荷重条件、居住性能、コスト、工期、施工性、敷地条件などが挙げられます。またそのほかにも地盤状況の確認による基礎形式の選定、コスト、工期なども考えなければなりません。
特に躯体コストの2割以上を占める基礎形式については、建物自体の自重の大きさによって変わり、軽いほうが基礎の大きさを小さくできるためコスト的には有利になります。例えば一般的なS造の建物重量は、RC造と比べて30%程度の軽量化が図れるため、直接基礎や摩擦杭などの採用も可能となり基礎形式の選定幅が広がります。
また、ここ数年の型枠工事や人件費、さらには資源の高騰による建築コストの上昇があります。そこで現場作業を省力化するため、プレキャストコンクリート(現場で組み立て・設置を行うことを前提に工場などであらかじめ製造されたコンクリート製品のこと)を採用することで現場作業の軽減や工期短縮による建築躯体コスト最適化を行う事例もあります。
このように、選定にあたってさまざまな要因が考えられますが、これらの要因を総合的に判断し、最適と思われる構造種別を決めることが重要になります。
兵庫県南部地震(1995年)以降、新潟県中越地震(2004年)、東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)(2011年)、熊本地震(2016年)など、大きな被害をもたらした地震の発生により、クライアントの耐震性能向上に対するニーズが増えてきています。
同じ地震力を用いて設計を行ったとしても構造の種類によって地震の時の揺れ方や被害の様子は大きく異なります。例えば低層の建物より高層の建物のほうが、RC造で作られた建物よりはS造で作られた建物のほうが揺れを感じやすくなります。また、同じRC造の建築であっても壁が多いもの(耐震壁付ラーメン構造)やWRC造は、地震の揺れや被害が少なくなります。
また、構造の配置バランスの重要性もあります。特に耐震壁の配置が平面的に偏っていると捩れることにより被害が大きくなる可能性があります。さらに階の上下で耐震壁の量が偏っている場合には耐震壁の少ない階に地震力が集中することがあります。このような構造は避けるべきものです。
近年クライアントの耐震性能向上のニーズに対応するため、耐震性能を大きく向上させる技術として免震や制震が多く採用されています。免震は、建物と基礎の間に積層ゴム等の免震装置を設け、地震による揺れが直接建物に伝わらないようにする技術です。制震(制振)は、建物の構造体に取付けた振動軽減装置(錘やダンパー等)を組み込むことで、地震エネルギーを吸収して、建物に粘りを持たせて振動を抑え、建物の揺れを小さくする技術です。前述した巨大地震に対しても、これらの有効性が実証され、住宅などの小規模建物にも採用されるケースが広がっています。
また、鉄骨、鉄筋、コンクリートなど構造材料の超高強度化が目ざましい発展をとげており、材料コストがまだまだ高いものもありますが、今後は高強度材料を用いることで、大スパンへの対応や部材断面を小さくすることも可能になります。
これらの新しい技術を採用することはもちろんですが、様々な構造的な配慮(工夫)や既存技術の組み合わせなどによって、耐震性を確保することが重要です。
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構造実績はすでに5000案件を超え、
近年「耐震性」と「経済性」を両立させた
構造躯体最適化SVシステム工法を続々と開発し、
ゼロコスト高耐震建築の普及に取り組んでいる。