あちこちのTVなどでは、2級建築士が1級建築士でなければ設計できない建物を設計した事を取り上げて、その事自体が問題のように報道されています。
事実、問題な部分はあるのですが、ちょっと視点がずれているケースがあります。
今の法令の中では構造設計を2級建築士どころか無資格であっても建築基準関係法上の違反にはなりません。
どうもこの辺をマスコミの方は勘違いしているようなので少し説明してみます。
まず法令上の設計者というのは一人しかいません。
一般的には、意匠を担当した元請け建築士が法令上の設計者となります。
ところが、ご存知のように設計業務は、意匠設計、構造設計、設備設計と分かれています。
さらに言えばCADオペレーターだって図面を作成する行為ですから設計の一部です。
では、CADオペレーターが高層マンションの図面を書くのに1級建築士である必要があるかと言えば、もちろんそんな必要はない訳です。
アルバイトでも学生でもOKです。
そして、構造設計もこのCADオペレーターと法令上の扱いが同じになっているのです。
法令上、構造設計はアルバイトでやっても、なんでもいい。
ただの”設計補助者”なのです。
お断りしておきますが、あくまで法令上の話です。
私も含めて、ほとんどの構造技術者は「自分は設計者である」という気持ちで仕事をしていると思います。
ちなみに管理人は当然有資格者であります。
さて、確認申請書を見るとわかりますが、構造設計者の名前はありません。
あるのは意匠の元請け設計者のみです。
そしてその元請け建築士が意匠・構造・設備と全ての設計を行った前提で確認申請書類を作成します。
なんで、こんな事になるかと言うと、建築関係基準の中では、”設計”という行為が現状の様な分業体制になる事を意図して作られていないからです。
では、今回の偽装のケースで本当に建築基準法違反にならないかというと微妙な部分があります。
それは今私が上記で説明した内容は、あくまでも元請けの一級建築士の監理の下、設計補助(構造設計)を行ったというのが前提になるからです。
だから、おそらく、今回構造設計を外注に出した元請けの意匠設計者は「一応チェックはしました」と言うでしょう。
というより言わない訳にはいかない。
丸投げでノーチェックですと言ったら、建築基準法に抵触する事になるからです。
逆に言えば、元請けの意匠設計者が構造設計の内容をちゃんとチェックすれば、法令上「構造設計は無資格でもできる」いう事になる訳ですが、現実的には意匠設計者にそれを要求するのはちょっと酷だと思います。
例えば、皮膚科の医師に向かって
「先生! 足の骨が折れてしまったので直してください!」
って言ったって無理ってもんです。
病院だって専門医があるように、我々の仕事も専門があり、全ての内容を一人でカバーできるほど簡単ではありません。
したがって、実際は分業でそれぞれの設計担当者が業務を行っているにもかかわらず、法令上は設計者が一人である前提のため、有資格者も結果的に一人でいい。
私がこの業界に入るずっとずっと前から、お国はこの矛盾をほったらかしです。
世の中には、資格を持たずに構造設計を専門に請け負っている技術者がたくさんいます。
もちろん技術的にすぐれている方もたくさんいます。
そしてそれは、元請けの意匠設計者との信頼関係の元、業界の中だけで仕事をするからこそ可能な形態でもあります。
またそう方々がいるから、経営の厳しい小規模な意匠設計事務所をバックアップしてなんとか経営がなりたっているといった現実もある。
こいった現実と法令の矛盾も、建築システムが抱える、多くの問題のなかの、一つといった所でしょうか。
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さくら構造(株)は、
構造技術者在籍数日本国内TOP3を誇り、
超高層、免制震技術を保有する全国対応可能な
数少ない構造設計事務所である。
構造実績はすでに5000案件を超え、
近年「耐震性」と「経済性」を両立させた
構造躯体最適化SVシステム工法を続々と開発し、
ゼロコスト高耐震建築の普及に取り組んでいる。