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構造設計と構造計算の違いとは?

構造は台風や地震など自然の脅威から建築を守る役割を担っています。柱や梁などの構造がしっかりしていてはじめて、建物は機能や安全を維持できます。建築は建築主の財産であるとともに社会資本としての役割を持ち、機能や美しさ、さらに安全で耐久性が高いこと、経済的であることなども重要です。

これらの条件を満たす最適な骨組を考えていくことを構造設計といい、重力や地震力などの想定される荷重に対して骨組みに生じる力を求め、それに見合った断面を決める作業を構造計算といいます。

それでは具体的に「構造設計」と「構造計算」についてみていきましょう。

構造設計とは

建築設計には大きく分けて、「意匠設計」、「設備設計」、「構造設計」があります。
「意匠設計」は、敷地の条件や周辺環境を考慮しながら建築物の配置を決定し、ファサードや間取り等をデザインすることです。 「設備設計」は、快適な室内環境のための空調設備、上下水道を設置する衛生設備、コンセントや照明を配備する電気設備を設計します。 「構造設計」は、建物の基礎や骨組を計画・設計し、積雪や地震などに対する安全性能を構造計算により確保します。構造設計や構造計算は、構造設計者が主体となって行なう業務となります。

建築を設計するためには幅広い専門領域の知識と技術が必要であるため、現在ではほとんどの建築において、建築設計者(意匠設計)とともに設備設計者や構造設計者が協力して設計を進め、それぞれの専門分野をカバーしています。

構造設計(構造計画)の業務項目には、満足させなければならない以下の条件があります。



また近年は、構造判断に制約を加える建築基準法や、場合によっては実験、検証、解析ソフトの開発からの条件なども加わりその制約は多岐に渡ります。

建築主からどんな建物が求められているか。建築設計者(意匠設計)の意図する全体あるいは個々の建築空間の構成、形状、大きさ、そして高さはどのようなものか。環境条件として、どんな場所に建つか。その場所の地盤はしっかりしているか。そこではどのような地震、強風そして雪などが発生するのか。

そうした条件を満たす構造の骨組や材料とはどのようなものか判断し、満足させなければなりません。つまり、構造設計には多角的で深い思考が必要とされるため、構造設計者には当然豊富な知識や判断力、理解力が求められています。

また、構造は建築の空間構成を規定します。例えば居室を広くするための壁・柱の位置や高さは構造によって決定されます。この求められる空間のあり方を十分に理解しそれを満たす構造を実現することが構造設計です。

構造計算とは

建築基準法第 1 条では、「この法律は、建築物の敷地、構造、設備及び用途に関する最低の基準を定めて、国民の生命、健康及び財産の保護を図り、もって公共の福祉の増進に資することを目的とする。」と謳われています。

また同法20条ではその手段として政令で定める技術基準を満足させることや、政令で定める構造計算を行うことが義務づけられています。

この構造計算の基本的な内容は建築基準法に定められており、実際はそれ以外にも各種の技術資料(学会本等)を参考にして行われますが、さまざまな条件も加味して、計算結果に余裕を持たせたり、仮定条件を変えて計算を行って確認したりすることで、総合的に骨組を決めていきます。

現在の構造計算は、必ず解析ソフトが必要になります。大きく分けて2種類の構造計算ソフトがあります。1つが一貫計算プログラム、2つ目が任意フレーム解析プログラムです。

一貫構造計算は、架構認識、剛性計算、荷重計算、応力計算、ルート判定、断面検定まで、一つの入力データで、これらの計算工程をノンストップで一気通貫に行うプログラムのことです。日本は地震大国のため、地震被害が報告される度に安全基準が見直され、確認すべき項目は多岐に渡っています。その検討項目が数多くあるため一貫構造計算プログラムなしで一般建物の設計はできないと言って過言ではないのが実情です。

任意フレーム解析プログラムは、一貫構造計算では難しい複雑な建物形状や応力状態のイメージが難しい建物の状態を確認するために用います。場合によっては、構造設計者のイメージする力の流れを確認するために、これらの複数のソフトを併用して結果の信頼性を判断することも多々あります。

意外に思う人もいるかもしれませんが、構造計算は、携わる構造設計者によって結果はマチマチで、どれひとつとして同じものはありえません。

建物を構造計算するためには,まず建築物を力学的(数理的)な取り扱いを可能とする適当なモデルに置換する必要があります。これをモデル化と呼んでいます。例えば耐震壁をモデル化する場合は線材置換法、ブレース置換法、壁エレメント法、有限要素法等あり、それぞれモデル化の持っている長所・短所と実際の建物が持っている性質を照らせ合わせて、どのモデル化を選択するかが解析結果に大きく影響します。

さらに、構造計算には、法令で定められた許容応力度計算、保有水平耐力計算、限界耐力計算、時刻歴応答解析等以外にも、実状に即したモデル化で、力学性状を把握したい場合に用いられる有限要素解析(FEM)等があり、それぞれの解析結果に合わせた安全率の取り方(クライテリア設定)も様々です。

これら結果として、構造設計者によって構造安全性に対する技術的なスタンスの違いが多岐にわたることになります。力の流れ等の的確な検討や判断は構造設計者の技量、経験、倫理観が必要で、個人差があります。

このように構造計算は構造設計の一部分の作業であり、骨組を計画し、構造計算の結果を見て骨組を決定することなど、計算以外にもさまざまな検討や判断が必要となります。

また、構造計算の結果を反映して実際の工事の元になる図面にしたものを構造設計図といいます。

おわりに

構造設計とは、個々の建築に最適な構造形式を提案し、建築に作用するさまざまな力を理解し、その力によって骨組みにどのような状態が生じるかを把握して、要求された安全性を確保することです。

そのため構造設計の様々な局面で、経験を積んだ構造設計者の判断が必要となります。多くの条件をバランスよく取り入れ、安全性に配慮した骨組みを設計するのが構造設計者の役割です。コンピュータを利用した構造計算は安全性確認の一役を担うに過ぎません。

また、構造設計者の活動は多岐にわたり、建築主や発注者の要望を把握し、建築設計者や設備設計者と協働し、さらに現場施工にも関与(監理)して品質確保に責任を持ちます。

モノづくりの観点からは、設計した内容が現場でどうつくり込まれていくか、その生産体制を理解し、その内容を設計に反映させるとともに、監理によって確認することもまた肝要です。

しかしながら、構造計算書偽装問題や欠陥住宅問題などを通じて、監理が適切に機能していない実態が明らかになっているとの指摘があります。また、監理が適切に行われていれば防ぐことができたと思われる欠陥住宅などの被害も多くあります。

特に構造に関わる施工ミスは後から修繕するのは容易ではなく、建築物の安全性に深刻な影響を及ぼす可能性があります。こうした事態を防ぐためには、構造を含めた建築全般に関する幅広い知識をもった技術者(例えば構造一級建築士)が、細心の注意を払って監理業務を実施する必要があります。