建物はすべて「構造」で支えられており、柱や梁などの「構造」がしっかりしていてはじめて、建物は機能や安全を維持できます。その建物の機能や安全性を確かめる手段として、構造計算ということばが使われます。
構造計算は、構造設計の中で重要な業務です。要求される機能や形を満たした骨組を考える構造計画と、計画した建物がさまざまな荷重を受けた時の状態を検証する構造計算の、両方が兼ね備わって良い構造設計が出来上がります。
これら構造設計・計算によって作成された「構造計算書」は、一定の規模以上の建築物においては、建築確認申請及び構造計算適合性判定申請時に提出しなければならない書類のひとつです。この書類によって、建築構造物の設計が、固定荷重・積載荷重・積雪荷重・風荷重・地震荷重等に対して安全であり、また使用上支障がないことが確認できます。
それでは「構造計算書」には具体的に何が記されているのでしょうか。
構造設計業務について
構造設計業務の概要を「さくら構造の仕事の進め方」でまとめています。
ぜひ、あわせてご覧ください。
建築確認申請及び構造計算適合性判定申請時に提出しなければならない「構造計算書」は、用いた構造計算の種別等によって異なりますが、網羅的に列挙すると以下になります(規則1条の3 表三より抜粋)。
構造計算書の作成にあたっては、許容応力度等計算、保有水平耐力計算、限界耐力計算、時刻歴応答解析などの構造計算が必要になります。建築構造物によっては構造設計一級建築士の有資格者のみが構造計算できるものがあり、その有資格者の人数は多くはありません。
上記のように構造計算といっても様々な種類がありますが、一般的な計算方法は「許容応力度計算」です。その他に一定規模以上の鉄骨造やRC造建物で使われる「保有水平耐力計算」や高層ビル等では「時刻歴応答解析」という方法を使います。それでは最も使われる「許容応力度計算」による構造計算書についてみてみましょう。
許容応力度計算とは、「建物にかかる固定荷重や積載荷重(これを長期荷重という)と地震や台風などの力(これを短期荷重という)を想定して算出した外力(材料等の内部に生じる抵抗力のこと)が、それぞれの部材の許容応力度 ( 限界点 )以下であることを計算により確認する」ということです。
つまり構造計算は、大きく分けて荷重計算、応力計算、断面算定の三つの部分からなり、荷重設定の妥当性、応力計算のモデル化の妥当性、断面の余裕度など、それぞれの結果を掌握し、建築構造物の全体像をイメージしながら行うことが必要となります。これらの確認手段として構造計算書が作成されます。
では早速、一般的な構造計算書の目次を見て流れを掴んでおきましょう。
構造計算書は、必ずしもすべての建物に必要なものではありません。建物の種類によっては、構造計算書が不要なケースがあります。例えば「四号建物」と呼ばれる木造2階建て住宅では、建築基準法施行令で定める「仕様規定」を満たすことで、構造計算書を作成しなくても建築基準法に定める構造耐力を有している住宅だと認められています。
しかしながら、実際に仕様規定を満たした四号建築(木造住宅)を構造計算してみると、構造計算上の必要な壁量に対して壁量が不足している四号建物が存在すると言われています。また、一般的な住宅であっても、木造3階建て、鉄骨造、鉄筋コンクリート造の住宅では、構造計算書が必要になるものがあります。
さらに以下のような場合はデザイン性(建築計画含む)と構造安全性がトレードオフにならないように、構造計算の必要性を確認すべきです。つまり住宅の構造計算は、法的な観点のみで必要性を判断して良いというわけではありません。
※住宅だけでなくすべての建築構造物に当てはまります。
構造計算書偽造問題は、A元一級建築士が、地震などに対する安全性の計算を記した構造計算書を偽造していたことによる一連の事件(2005年11月17日に国土交通省公表)のことです。具体的には、国土交通大臣認定構造計算ソフトウエアの計算結果を改ざんし、構造計算書を偽装しました。
その建物の建築確認・検査を実施した行政および民間の指定確認検査機関がそれ見抜くことができず、建築基準法に定められた耐震基準を満たさないマンションやホテルなどが建設されました。
建築確認審査で見つけられなかった原因としては、構造計算がコンピュータ中心になっていて、構造計算書も1,000枚以上となることも多く、構造設計のチェックがしにくいという現状がありました。これらの事件は、人命や財産に関わるものであることから大きな社会問題となりました。
構造設計者の役割には、構造設計(構造計算)と監理という業務があります。構造設計は、構造計算書と構造図面の作成だけではなく、建築計画との整合性とを計りながら、様々な構造種別(鉄筋コンクリート造、鉄骨造、木造等)の中からそれぞれの建物に相応しい構造(骨組)を決定することです。
これらにはデザイン(建築計画含む)、コスト、構造安全性等の矛盾する与条件のバランスを考えながら専門家としての判断が求められます。場合によっては、構造的な検討結果により建築計画を作り直していくこともあります。
建物の構造的な品質、安全性を確保するために最も重要なことは、信頼できる構造設計者が構造設計を行ない、構造計算書を作成することです。つまり信頼できる構造設計者を選ぶことが建物の安全性を守る最も確実な方法になります。
構造計算書偽装問題と建設費高騰の密接な関係
近年の建設費高騰には構造計算書偽装問題と密接な関係がありました。
詳しくは「建設費が高騰した背景」でまとめています。ご参考になれば幸いです。
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構造技術者在籍数日本国内TOP3を誇り、
超高層、免制震技術を保有する全国対応可能な
数少ない構造設計事務所である。
構造実績はすでに5000案件を超え、
近年「耐震性」と「経済性」を両立させた
構造躯体最適化SVシステム工法を続々と開発し、
ゼロコスト高耐震建築の普及に取り組んでいる。