建築構造設計は、地盤の状況把握から始まり、構造形式(構造システム)・材料の選択、それを裏づける構造計算そして構造図作成、現場監理までを含む幅の広いものです。これらの内容は、経験に基づく工学的判断を必要とし、人々の生活や財産、人命にまで関わる重要な役割を担っています。
それでは具体的に「建築構造設計に必要な資格」についてみていきましょう。
建築士には、一級建築士、二級建築士、木造建築士、構造設計一級建築士、設備設計一級建築士の5種類があり、その資格により設計監理できる建築物に違い(高さや規模など)があります。
一級建築士とは、国土交通大臣の免許を受け、一級建築士の名称を用いて、建築物に関し、設計、工事監理その他の業務を行う者をいい、建築士法三条には、一級建築士の業務範囲(一級建築士でなければできない設計又は工事監理)が定められています。大雑把にいえば複雑・高度な技術を要する建築物を含むすべての建築物の設計および工事監理を行うことができる基本となる資格が一級建築士になります。
平成18年12月改正建築士法により、構造設計一級建築士制度が創設され、一定規模以上の建築物の構造設計については、以下のどちらかが義務付けられました。
①構造設計一級建築士が自ら設計を行う
②構造設計一級建築士に構造関係規定への適合性の確認を受けること
この構造関係規定への適合性の確認がなされずに建築基準法に定める建築確認申請が行われた場合には、その建築確認申請書は受理されないこととなっています。
関与義務付けの対象となる建築物は、一級建築士の業務独占の対象となる建築物のうち、大臣認定が義務付けられる高さ60m超の建築物や、構造計算適合性判定が義務付けられている建築物が原則として対象(建築士法第3条第1項、建築基準法20条第1項第1号・第2号)になります(下記参照)。
これらのうち、構造方法について大臣認定が義務づけられている高さ60m超の建築物
高さ60m以下の建築物で該当するもの
上記②の場合、構造設計一級建築士以外の一級建築士が、義務付け対象となる建築物の構造設計を自ら行い、構造設計一級建築士に構造関係規定への適合性の確認を受けることも認められていますが、建築の構造設計には幅広い専門領域の知識と技術が必要です。
もちろん、構造設計一級建築士の関与が必要ない建築物で、建築士(一級、二級、木造建築士)の業務独占の対象となる建築物においては、設計者が構造安全性等を確認して設計することも可能です。
しかし、現在ではほとんどの建築において、建築設計者(意匠設計)とともに設備設計者や構造設計者の専門性が分かれており、お互い協力して設計を進め、それぞれの専門分野をカバーしています。この建築構造設計分野において、専門性の高いエキスパートであることを証明する資格が構造設計一級建築士です。
構造設計一級建築士証を申請するには原則として、一級建築士として5年以上構造設計の業務に従事した後、国土交通大臣の登録を受けた登録講習機関が行う講習課程を修了した者でない申請できないため、ある一定の高度な専門性を有していると判断できます。
上記、構造設計一級建築士が創設されたとほぼ同じに、平成19年6月20日に施行された改正建築基準法において、新しく「構造計算適合性判定制度(法第6条の3)」が設けられました。
この制度は、構造計算が必要な大規模な建築物や中規模な建築物において建築確認審査を受ける場合、「その建築物の構造計算がプログラムなどにより適正に行われたものであるかどうか」を、都道府県知事または知事が指定する構造計算適合性判定機関に、「構造計算適合性判定」を依頼するというものです。
構造計算適合性判定は、専門的な知識を持つ「構造計算適合性判定員」が行います。判定員になるためには、国土交通省令で定めている構造計算適合性判定資格者検定を受けなければなれません。その要件として一級建築士免許を取得し、5年以上の実務経験(構造設計業務や審査)がある事としています。検定に合格し、構造計算適合性判定の業務を行うためには国土交通大臣の登録が必要になります。
この構造計算適合性判定員により構造計算を含む構造設計図書を審査し、適合すると判断されてはじめて、建築主事または指定確認検査機関による建築確認の審査が行われます。
構造計算適合性判定の対象となる建築物は下記になります。
(注)上記1.2.について、許容応力度等計算(ルート2)審査対応機関に確認申請する場合、許容応力度等計算(ルート2)については、構造計算適合性判定の対象外となります。
建築物の構造設計をルート2かルート3で設計すれば,構造設計一級建築士の資格が必要と覚えておけば、ほぼ間違いないですが、構造計算適合性判定を必要とするにもかかわらず、構造設計一級建築士の資格を必要としない建物として、以下の2つが挙げられます。
①建物規模が一級建築士でなくても可能なものをルート3などで設計した場合(上表で1.の場合)
②ルート1を大臣認定プログラムで設計したことによって適合性判定を必要とした場合(上表で3.の場合)
また、構造計算適合性判定を必要としないで構造設計一級建築士の資格を必要とするのは,60mを超える場合で法第20条第1項第1号の設計をした場合です(ただし性能評価及び大臣認定が必要)。ここでは事例を挙げながら資格の要否を見ていきましょう。
ルート3で設計しているため構造設計一級建築士の資格が必要と思われるかもしれませんが,この規模の建築物は二級建築士でも設計できるため必要ありません(上記①)。ただしルート3で構造設計しているため、構造計算適合性判定は必要となります。
大臣認定プログラムを使った構造計算書を提出すると、どのような規模の建築物であっても構造計算適合性判定での審査が行われます。メリットとしては、構造計算適合性判定の手数料が安くなること、また判定期間が短く設定されています。
以上、事例を挙げて説明しましたが、構造設計ルートや、建築基準法令の読込、さらには構造計算適合性判定における質疑対応など難しい部分があると思いますので、弊社へご相談下さい。
JSCA建築構造士は、豊富な専門知識と経験を基に優れた技術力を用いて、構造計画の立案から構造の設計図書までを統括し、構造に関する工事監理も行うなど、構造設計一級建築士の中でも特に建築構造の全般について、的確な判断を下すことの出来る技術者として、一般社団法人日本建築構造技術者協会(JSCA)の責任において、社会に推薦しうる構造設計者の呼称です。
資格要件としては、「一級建築士登録から4年以上の実務経験」「2年以上の責任ある立場での構造設計・監理の実務経験」「書類審査・筆記試験・面接試験の合格」といった規定があります。
弊社にはJSCA建築構造士が在籍しており、高い専門知識と経験を持つ技術者として構造レビューを行い、設計品質向上に努めています。
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構造技術者在籍数日本国内TOP3を誇り、
超高層、免制震技術を保有する全国対応可能な
数少ない構造設計事務所である。
構造実績はすでに5000案件を超え、
近年「耐震性」と「経済性」を両立させた
構造躯体最適化SVシステム工法を続々と開発し、
ゼロコスト高耐震建築の普及に取り組んでいる。