建物を建築するために準拠する建築基準法や各種設計基準は、過去の大きな地震災害を経て見直されてきています。例えば1968年の十勝沖地震(マグニチュード=7.9、死者52人)では、特に鉄筋コンクリート短柱の顕著なせん断被害が多数生じました(せん断破壊した短柱では、帯筋は20cm間隔)。それらを受け1971年には鉄筋コンクリート構造計算規準が改定され、また基準法施行令も改正されて帯筋は現在の基準10cm間隔となりました。
その後も、1978年の宮城県沖地震(マグニチュード=7.4、死者28人)を契機として、1981年(昭和56年)に建築基準法の耐震規定が大きく改正され、現在の新耐震基準となりました。
この新耐震基準(1981年6月)以前に建てられた旧建築基準法による建物(旧耐震基準)の中には耐震性能が不足しているものが多数あり、1995年に起きた阪神・淡路大震災(マグニチュード=7.3、死者6,434人)においては、これらの建物に被害が集中しました。
耐震診断の目的は、既存の建築物で旧耐震基準において設計され耐震性能を保有していない建物を、現行の耐震基準と比較して耐震性能をどの程度保持しているかの判定を行うことです。特に旧耐震基準で設計された建築物に対して耐震診断が行われています。
阪神・淡路大震災の被害状況から、1995年に「耐震改修促進法」が施行されました。耐震改修促進法では、建物の規模や社会的な影響度などにより、耐震診断の緊急度の扱いが下表のように区分されています。
区分1~2の「要緊急安全確認大規模建築物」および緊急輸送道路沿道建築物などの「要安全確認計画記載建築物」では耐震診断は義務とされ、違反した場合の罰則規定があります。
区分3~4の「所管行政庁による指示の対象となる特定建築物」および「多数の者が利用する特定建築物」では、建物の所有者に耐震診断を行い、必要に応じて耐震改修を行うよう努めなければならない努力義務が定められています。
一方、区分5として示している旧基準で設計された建物のうち、区分1~区分4に該当しない建物に対しては、耐震診断の義務についての特別な規定はありません。
なお、新耐震基準以前に建てられ、耐震診断や耐震改修などによって現行の法律の適用を受けていない建築物は、当時の法規によって確認されたものですので「法違反」とはなりませんが「既存不適格建物」ということになります。
耐震診断は、まず予備調査として建物の設計図書の有無、建物使用履歴等の診断に必要な情報や資料の収集を行い、診断計画の立案をします。つまり予備調査は、耐震診断に必要な建物の基礎資料を得ることを目的としています。しかしながら建物が古く、設計図書を紛失しているケースが時々あります。そのような建物の耐震診断を行う場合は、最低限必要な構造計算ができるように現地調査を行います。これを図面の復元といいます。
次に現地調査を実施し、その結果から耐震性の検討・評価を行います。現地調査は、目視による外観調査(劣化)、図面照合、コンクリート強度試験・中性化試験等の調査を行います。
耐震診断は、これら予備調査と現地調査の結果を踏まえて、建物が保有する耐震性能を評価し、現行の耐震基準と比較して判定を行います。
耐震診断には第1次診断法から第3次診断法まであり、一般的には診断次数が高くなるほどより詳細な判定ができ、その結果の信頼性は高くなりますが、期間は長くなり、費用が高くなる傾向があります。
どの診断法を適用するかは、対象建物の構造形式や規模、これら診断法の特徴などを考慮して決める必要があります。
1981年以前の旧耐震基準の建物は、設計法が現在(新耐震基準)と異なるため、耐震診断では建物の強度や粘りに加え、その形状や経年状況を考慮した耐震指標(Is値)を計算します。Is値は、「保有性能基本指標Eo」に「形状指標Sd」と「経年指標T」を補正係数として乗じて算定します。Is値は、建物の強度と靱性が大きいほど高く評価されます。
耐震診断の費用は、建物規模や建物状況にもよりますが、概ね以下の費用が目安となります。
但し、いずれの場合も設計図書(特に構造図)が無い場合はそれらの図面を復元する必要がありますので、現地調査項目が多くなり、上記の㎡単価を大きく上回ります。
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さくら構造(株)は、
構造技術者在籍数日本国内TOP3を誇り、
超高層、免制震技術を保有する全国対応可能な
数少ない構造設計事務所である。
構造実績はすでに5000案件を超え、
近年「耐震性」と「経済性」を両立させた
構造躯体最適化SVシステム工法を続々と開発し、
ゼロコスト高耐震建築の普及に取り組んでいる。