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耐震診断・耐震補強設計 2018.04.22

耐震診断・耐震補強業務の流れ


新耐震基準(1981年6月)以前に建てられた旧建築基準法による建物(既存不適格建築物という)の中には現基準と比べて耐震性能が不足しているものが多数あります。特に1995年に起きた阪神・淡路大震災(マグニチュード=7.3、死者6,434人)においては、これらの建物に被害が集中する結果となりました。

旧耐震基準において設計された建物を、現行の新耐震基準と比較して耐震性能がどの程度保持しているかを耐震診断によって明らかにすることで、大地震時に構造躯体の損傷、崩壊等の被害が生じることがないか、人命の安全が確保されているかが判断できます。また耐震診断によって、建物の耐震性能上の問題点があった場合には、合理的に改善する補強工法を選定することで、新耐震基準と同等以上の目標性能(安全性)を確保することが可能です。それでは具体的に「耐震診断・耐震補強業務の流れ」についてみていきましょう。

1.耐震診断から耐震改修(補強)までの流れ

耐震診断から耐震改修(補強)までの流れを大きく分けると、A.予備調査、B.耐震診断、C.改修設計、D.改修工事となります。


A.予備調査

1.お問い合わせ
電話、メール、FAX等にてお問い合わせ。
2.ヒアリング(予備調査)
ご要望、建物の状況(建物概要、設計図書の有無、使用履歴等)、予算、スケジュールなどを確認し、耐震診断の必要性を判断します。必要に応じて現地で目視確認を行います。
3.診断方法の立案
ヒアリングした内容をもとに耐震診断方法(耐震診断レベル、1次~3次診断)を立案します。
4.お見積り・工程提案
耐震診断費用と工程を提案します。
備考
耐震診断を行う前に、予備調査として建物の設計図書(一般図・構造図)の有無の確認、建物履歴の確認、建物の概要(延床面積・階高・竣工年など)、建物の構造種別(RC造・WRC造・S造・SRC造など)、建物の架構(ラーメン構造・壁式など)、建築確認通知書の存在の有無、検査済証の有無などを事前に把握して、耐震診断の必要性を検討します。また、これらの事をふまえて耐震診断見積書を作成します。

B.耐震診断

5.契約
契約の締結し、耐震診断を開始します。
6.初期打合せ
・社内プロジェクト会議
設計担当と図面担当を交えて、スケジュール、耐震診断方法を共有します。
・お客様とキックオフミーティング
診断方法を確認し、ヒアリングの段階で共有したゴールに進むために、不⾜している情報を初期質疑としてキックオフミーティングで確認します。
7. 現地建物調査
図面との照合、敷地内及び周辺の状況の確認、外観調査(ひび割れ、変形、不同沈下等)、材料調査(コンクリートコア採取による圧縮強度・中性化深さ測定等)を行います。また、構造図が無い場合には柱、梁、壁等の鉄筋径・本数、鉄骨のサイズ等をはつり調査し、図面の復元を行います。
8.耐震診断
予備調査と現地建物調査の結果を踏まえて、建物が保有する耐震性能を評価し、現行の耐震基準と比較して判定を行います。
耐震診断の結果から、補強の可否及び補強の必要性があれば、概算補強案を複数提案します。
備考
耐震診断を行うために必要な建物の現地建物調査項目は、図面の有無、建物の規模、用途、調査の可否などを考慮し、耐震診断レベル(一次、二次、三次、その他)に応じて診断者が適切に設定し、対象建物の構造形式や規模、これら診断法の特徴などを考慮して決めます。
また、耐震改修(診断)に関する助成制度については主に国の基盤制度を活用して、自治体が行っており、対象となる建物や金額などはそれぞれの自治体によって異なり、利用するには事前に自治体の窓口に相談する必要があります。
耐震診断を行った結果が「地震の震動及び衝撃に対して倒壊し、又は崩壊する危険性が高い」若しくは、「地震の震動及び衝撃に対して倒壊し、又は崩壊する危険性がある」と判定された場合には、耐震改修(補強)設計を行い、耐震改修(補強)を行う必要があります。診断者の行う耐震診断は、一定の基準に基づいて行われ、その結果に沿った耐震診断書を作成します。

C.改修(補強)設計

9.ヒアリング及び改修(補強)工法の選定
ご要望(目標性能等)、予算、スケジュールなどを確認します。
10.お見積り・工程提案
耐震改修(補強)設計と工程を提案します。
11.契約
契約の締結し、耐震改修(補強)設計を開始します。
12.改修設計事前打合せ
・社内プロジェクト会議
改修設計担当と図面担当を交えて、スケジュール、耐震改修(補強)方法を共有します。
・お客様とキックオフミーティング
改修(補強)方法を確認し、ヒアリングの段階で共有したゴールに進むために、不⾜している情報を初期質疑としてキックオフミーティングで確認します。
13.改修(補強)計画の立案
目標性能を満たすための必要補強耐力を算出し、これに基づき補強に必要な各階の補強部材量を把握し、改修(補強)計画を立案します。
14.改修(補強)設計の実施
設計図書一式を作成します。
15.管理者チェック
構造計算書及び構造図に相違はないか、また安全性確認に必要な情報が網羅されているか等を管理者がチェックします。
16.評価(認定)
補強設計は第三者評価機関において評価(認定)を取得します。
17.改修(補強)設計内容説明
改修(補強)設計の内容を説明します。建物の耐震性能上の問題点をクリアのために何をしたか、打合せ通りの設計になっている旨をお客様にお伝えします。
18.納品
以上の内容に問題なければ納品です。
備考
業務継続の観点から耐震改修(補強)計画・立案を進める場合、構造体の丈夫さだけでなく、電気や空調、衛生などの「設備」、つまり建物を使用する上で必要な「機能」や、仕上げ材などの非構造部材への対策も考える必要があります。これら建物の設備や使い勝手(機能)、耐震改修工事の費用、工期など様々なことを考慮して、複数の補強案を検討します。
この補強案の検討では、その建物に応じた目標性能を設定する必要があります。一般の建物では、現行の建築基準法に従い、中小地震に対しては無被害で機能保持し、震度5強から6弱程度の大地震に対しては被害を軽微~小破程度にとどめ、さらに震度6強から7の強大な地震に対しても建物が倒壊することなく人命を保護することを目標として設定されています。 次に改修(補強)工事のための(設計図書)を作成します。この時点で工事費見積りを依頼します。また、改修(補強)工事で自治体等の補助金を利用する場合には、耐震改修促進法における「認定」が必要などの条件があるため、合わせて諸条件を確認する事が重要です。

D.改修工事

19.施工現場からの質疑対応・現場監理
工事開始後、必要に応じて定例打ち合わせに参加し、工事進捗状況、施工内容の確認をします。建主様の立場で工事品質の監理し、設計調整を行います。
備考
「2.耐震改修(補強)で考慮すべきこと」を参照。

2.耐震改修(補強)で考慮すべきこと

改修(補強)工事では、既存建築物として利用されながらの施工になるため、実際に耐震改修(補強)工事を始めた段階で、「当初設計図書と現地施工とが異なり施工が困難」、「既存構造体が施工不良の場合、設計時の補強では想定した強度が見込めない」、「既存の開口部から耐震補強部材の搬入が困難」等の様々な問題が生じる可能性があります。その結果、現地状況に合わせて補強仕様や設計・施工の内容を変更する場合には、設計者や耐震判定委員会等の耐震改修計画の判定・評価機関に必ず確認する必要があります。