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耐震診断・耐震補強設計 2018.04.07

耐震診断って必要?耐震診断から耐震補強までの流れを解説!

建物を建築するために準拠する建築基準法や各種設計基準は、過去の大きな地震災害を経て見直されており、大きく改定されたのは1981年(昭和56年)の新耐震基準です。

この新耐震基準(1981年6月)以前に建てられた旧建築基準法による建物(既存不適格建築物という)の中には耐震性能が不足しているものが多数あり、特に1995年に起きた阪神・淡路大震災(マグニチュード=7.3、死者6,434人)においては、これらの建物に被害が集中する結果となりました。ただし既存不適格建築物であっても、新耐震基準と照らし合わせても耐震性能が高いものがあり、既存不適格建築物だからといって即危険な建物とは限りません。

しかしながら、旧耐震基準において設計された建物を、現行の新耐震基準と比較して耐震性能がどの程度保持しているかを耐震診断によって明らかにすることで、大地震時に構造躯体の損傷、崩壊等の被害が生じることがないか、人命の安全が確保されているかが判断できます。この耐震診断は、特に旧耐震基準で設計された建築物に対して行われています。

1.耐震診断から耐震改修(補強)までの流れ

耐震診断から耐震改修(補強)までの流れを大きく分けると、①予備調査、②耐震診断、③改修設計、④改修工事となります(下表:一般的な耐震診断・補強のフローチャート(一般社団法人 日本建築構造技術者協会作成資料より))



①予備調査

耐震診断を行う前に、予備調査(現地目視調査)として建物の設計図書(一般図・構造図)の有無の確認、建物履歴の確認、建物の概要(延床面積・階高・竣工年など)、建物の構造種別(RC造・WRC造・S造・SRC造など)、建物の架構(ラーメン構造・壁式など)、建築確認通知書の存在の有無、検査済証の有無などを事前に把握して、耐震診断の必要性を検討します。また、これらの事をふまえて耐震診断見積書を作成します。

②耐震診断

次の現地建物調査は、耐震診断を行う建物の履歴および現状を把握するために、図面との整合性の確認(実測)、目視調査としてひび割れ、変形、老朽化の把握、材質調査として各種試験(コンクリート強度及び中性化試験、鉄筋の超音波探傷試験など)を行って、耐震診断に必要な形状指標・経年指標・材料強度・部材断面などの諸数値を反映させるとともに、耐震診断結果の総合的な評価資料を作成するために実施します。

これら耐震診断を行うために必要な建物の調査項目は、図面の有無、建物の規模、用途、調査の可否などを考慮し、耐震診断レベル(一次、二次、三次、その他)に応じて診断者が適切に設定し、対象建物の構造形式や規模、これら診断法の特徴などを考慮して決めます。

また、前回説明した耐震改修(診断)に関する助成制度については主に国の基盤制度を活用して、自治体が行っており、対象となる建物や金額などはそれぞれの自治体によって異なり、利用するには事前に自治体の窓口に相談する必要があります。

耐震診断を行った結果が「地震の震動及び衝撃に対して倒壊し、又は崩壊する危険性が高い」若しくは、「地震の震動及び衝撃に対して倒壊し、又は崩壊する危険性がある」と判定された場合には、耐震改修(補強)設計を行い、耐震改修(補強)を行う必要があります。診断者の行う耐震診断は、一定の基準に基づいて行われ、その結果に沿った耐震診断書を作成します。

耐震診断の結果における安全性の評価は、次の区分に分類されています。

※is値とは構造耐震指標のことをいい、地震力に対する建物の強度、靱性(じんせい:変形能力、粘り強さ)を考慮し算出します。

なお、上記は震度6強から7に達する程度の大規模の地震に対する安全性を示しており、いずれの区分に該当する場合であっても、違法に建築されたものや劣化が放置されたものでない限りは、震度5強程度の中規模地震に対しては損傷が生ずるおそれは少なく、倒壊するおそれはないとされています。また地震に対する安全性の評価がⅠ,Ⅱであっても、それをもって違反建築物とは扱われません。

③改修設計

業務継続の観点から耐震改修(補強)計画・立案を進める場合、構造体の丈夫さだけでなく、電気や空調、衛生などの「設備」、つまり建物を使用する上で必要な「機能」や、仕上げ材などの二次部材への対策も考える必要があります。これら建物の設備や使い勝手(機能)、耐震改修工事の費用、工期など様々なことを考慮して、複数の補強案を検討します。

この補強案の検討では、その建物に応じた目標性能を設定する必要があります。一般の建物では、現行の建築基準法に従い、中小地震に対しては無被害で機能保持し、震度5強から6弱程度の大地震に対しては被害を軽微~小破程度にとどめ、さらに震度6強から7の強大な地震に対しても建物が倒壊することなく人命を保護することを目標として設定されています。

それに対し、学校など大地震後に避難施設として使用する建物や、病院、防災本部となる庁舎などの公共建物など大地震後にも機能を維持する必要のある建物では耐震レベルA(1.5)、レベルB(1.25)に上げて改修(補強)計画を立てます。

一般の建物においても、公共建物と同様に目標性能を上げることももちろん可能ですが、コスト等を考慮して総合的に決定することが大切です。

次に改修(補強)工事のための(設計図書)を作成します。この時点で工事費見積りを依頼します。また、改修(補強)工事で自治体等の補助金を利用する場合には、耐震改修促進法における「認定」が必要などの条件があるため、合わせて諸条件を確認する事が重要です。

④改修工事

改修(補強)工事では,多くの場合、補強工事のみを単独で行うことは少なく、その他のリニューアルと同時に実施するケースが多いです。これは耐震補強工事の周辺工事(仕上げの撤去、復旧、建物利用者への配慮)との関連や電気や空調、衛生などの設備も更新することで、建築全体の性能向上、さらには建物の付加価値の向上が図れるといったメリットがあります。

ただし、改修(補強)工事では、既存建築物として利用されながらの施工になるため、実際に耐震改修(補強)工事を始めた段階で、「当初設計図書と現地施工とが異なり施工が困難」、「既存構造体が施工不良の場合、設計時の補強では想定した強度が見込めない」、「既存の開口部から耐震補強部材の搬入が困難」等の様々な問題が生じる可能性があります。

その結果、現地状況に合わせて補強仕様や設計・施工の内容を変更する場合には、設計者や耐震判定委員会等の耐震改修計画の判定・評価機関に必ず確認する必要があります。