昨日、限界耐力設計の講習会に行って来ました。
北海道はこういう講習会が首都圏に比べると非常に少ないのでたいへん貴重です。
限界耐力設計はご存じでしょうか?
平成12年から施行されたわりと新しい構造計算手法です。
考え方は昔からありましたが、法令が整備され一般的な構造計算法として我々末端の実務家も利用できるようになりました。
最近ではかなり実績が出てきたようで、主にデベロッパーや大手ゼネコンでは高層建物(10階程度以上)では限界耐力で設計する事が多くなって来ていると聞きます。
この計算法の採用する業者が増えた理由の一つに「高層建物の構造コストを下げる事が出来る」という点があげられます。
この事は講習会でも紹介されていました。
そして私自身もコストが下がる事を周囲の技術者から聞いており、「高層を設計するなら限界耐力で」といった認識が少しづつ出来てきている感じもします。
「なぜコストが下がるの?」
地震力(応答値)が驚く程小さくなります。
場合によっては従来計算法の地震力の50%も小さくなる場合もあります。
あくまで計算上ですが。
5%でないですよ。
もう一度書きますが50%です。
それと仕様規定が除外されます。
シバリがなくなれば自由度が増します。
今までなら31m以上のRCはSRCにしなければいけなかったのがRCでもOKになったりします。
あなたは、設計で考える地震力を半分にした建物どう思いますか?
新しいという事はその計算法の問題点のコンセンサスが実務者レベルで出来ていない可能性があります。
計算法というのは一つの道具ですから、使い方を間違えると大変です。
私の母親の話ですが、いつも使っているタッパ(食材をよく入れるあれ)の蓋がバラバラで合っていません。
だから汁物をタッパに詰めて運ぶといつも汁がこぼれます。
ちゃんと使えばタッパは密閉性があって汁もこぼれない道具なのに、ちゃんと使わないから汁がこぼれまくりです。
私は母親がタッパに詰めた食材を運ぶのが嫌です。
道具はちゃんと使ってこそ便利なんです。
限界耐力というツールも同じです。
一応話をわかりやすくしようとして母親の話を書きましたが、逆効果だったとうっすらと気づいております・・・・気を取り直して話を戻します。
では実際に、限界耐力で計算した結果をそのまま設計に使って問題がないのか、この講習会で検証していました。
検証の仕方は、”従来の計算法”と”限界耐力計算”を同一条件で構造解析し、さらに同一モデルで地震応答解析を行った時の応答値(地震力)が2つの計算法と比較して大きいのか小さいのかを比較します。
結論からいうと、場合により、地震応答解析をやった時の応答値が限界耐力計算で計算した応答値を上回る事がある。
という事です。
もちろん、地震波や地盤条件により結果は変わりますので全てのケースを反映した結果ではありませんが、傾向として、限界耐力計算をやると地震力が実際より小さめに出ると言えます。
設計地震力を数字上小さくすれば、確かにコストは下がっていいですが、そのマンションを買う消費者はその事実を知らないでしょう。
限界耐力は始まったばかりです。
もちろん限界耐力で計算したマンションはまだ大きな地震を経験していません。
関東にはすごい勢いで限界耐力で計算したマンションが建っています。
関東には大きな地震が来ると言われていますが、何事もなく、いらぬ心配であってほしいと心から願っています。
***参考サイト***
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構造技術者在籍数日本国内TOP3を誇り、
超高層、免制震技術を保有する全国対応可能な
数少ない構造設計事務所である。
構造実績はすでに5000案件を超え、
近年「耐震性」と「経済性」を両立させた
構造躯体最適化SVシステム工法を続々と開発し、
ゼロコスト高耐震建築の普及に取り組んでいる。